
経済・金融・経営評論家/前金融監督庁(現金融庁)
顧問金児 昭
5月の末(当時信越化学は5月決算だった)、小田切社長は、経理担当の我々3人を社長室に呼び「よく頑張ってくれましたね。ただ、監査を行う会計士の方々の立場を考えれば、一刻も早く償却してほしいはずです。だから私は、2年での償却を決めました。必要なお金は、保有する銀行株を売って調達することにします。これから、各行の頭取さんに会ってお願いしてきます」と言い残し、出かけられた。
当初、否定的な見解を持ちながらも、私たちの話にしっかりと耳を傾けてくれた土肥、石川両会計士には今でも頭が下がる。ちなみに数年後、公認会計士補の実務補習時の試験に、これと同じ会計処理が是か否かを問う問題が出題された。答えは「否」――。私たちが扱った「日本初の経理処理」は、「日本唯一の経理処理」となった。
経済・金融・経営評論家/前金融監督庁(現金融庁)顧問金児 昭
1936年生まれ。東京大学農学部卒業後、信越化学工業に入社。以来38年間、経理・財務部門の実務一筋。前金融監督庁(現金融庁)顧問や公認会計士試験委員などを歴任。現・日本CFO(経理・財務責任者)協会最高顧問。著書は2010年1月現在で、共著・編著・監修を含めて123冊。社交ダンス教師の資格も持つ。