The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
GMOリサーチ株式会社
取締役 グローバル経営管理本部長森 勇憲
「会計士のなかでも、私はCFOになるのが遅かった部類だと思います」と森勇憲氏は言う。監査法人で約10年。コンサルティングファームで4年。そこでしか積めない経験を糧に、事業会社のCFOへと転身――。現在、インターネットリサーチ事業を行うGMOリサーチの取締役グローバル経営管理本部長として、自社の成長をけん引する森氏に、これまでの人生を振り返っていただいた。
「帳簿を見ればお客さまのことが全部わかると、父は誇らしげに話していました」。税理士事務所を経営する父親の姿を見るうち、自分も将来、資格を取って企業の支援をしたいと考えていた。公認家計士試験の勉強に本腰を入れたのは大学3年次からだが、初回の受験で見事合格。就職先は「自由度が高く、多様な仕事をやらせてくれそうな」中央青山監査法人を選んだ。
「会計監査の仕事が7~8割。そのほか内部統制構築のアドバイザリー業務なども経験させてもらいました。監査業務を通じて吸収した知識がアドバイザリー業務で役立つことを学べたのもよかった。将来のことなど何も考えず『会計士として一人前になりたい』一心で仕事をしていた時期ですね」
その後、中央青山の元メンバーが立ち上げたPwCあらた監査法人に合流。立ち上げメンバーと仕事をした経験があり「誘われた時はためらわなかった」と森氏は述懐する。しかし誤算もあった。海外のPwCオフィスから来たスタッフも多く、所内の会話はほぼ英語。
「それまで『英語ができなくても監査はできる』と思っていたのですが、想像以上にグローバルな職場環境に、このままではここで生存していけないといった危機感を抱きました。英会話学校に通い英語が身についてくると今度は『海外で一度働いてみたい』と考えるように。顧客の多くが海外に進出するなか、自分も海外に出ることで将来のキャリアの幅を広げようと思ったのです。希望が叶って出向したシドニー事務所では、主に現地企業の監査業務に従事。監査の仕方そのものは日本とそう変わりませんが、異文化の人々と英語で仕事することに苦戦しました。でも居心地はよかった。みんなオープンで、フレンドリーでしたから」
森氏のキャリアが監査から離れていくのがここから。シドニー出向を選んだ理由の一つに、オーストラリアがIFRSの先行適用国だったことが挙げられる。「IFRSの経験が会計士としてのアドバンテージになる」と読んだのだ。帰国後の森氏がアサインされたのは、日本企業のなかでもいち早く準備を進めていた大手IT企業のIFRS導入プロジェクトだった。
「IFRSのみならず、英語や海外の会社とのやり取りなど、これまで培ってきたものを総動員できた仕事です。社長直轄のプロジェクトで大変でしたが(笑)、ものすごい充実感を得ることができました。その先のキャリアにつながる発見もあった。会計士は専門職で、難しいテーマの深掘りは得意。でもプロジェクトマネジメント(PM)は不得手です。このプロジェクトはPMを得意とするコンサルタントとタッグを組んだことで、PMの価値を実感できた。そしてその矢先に、PwCコンサルティングへの出向の誘いが。ぜひ自分もコンサルを経験し、PMを学びたいと思い二つ返事で快諾しました」
PwCコンサルティングでは会計領域のコンサル全般を経験した。そこで学んだものは何か?
「会計や経理の知識レベルは、監査法人に勤めていた頃のほうが高かったと思います。でもコンサル業務では、必ずしも最高レベルの会計知識は必要ありません。むしろPMのスキルがお客さまの満足に不可欠だと痛感しました。極端な話、高度な専門知識が必要なら別の会計士にサポートをお願いすればいい。お客さまの満足にはプロジェクト全体の成功が必要であり、そのために必要なのはコンサルとしてのPMの力量――その習得に励みました」
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GMOリサーチ株式会社取締役 グローバル経営管理本部長森 勇憲