熱き会計人の転機
株式会社I-GLOCAL
代表取締役 公認会計士蕪木 優典
公認会計士を志したきっかけを教えてください。
蕪木まずは、会社員になりたくないという消極的な理由がありました。医者にはなれないし、国語力がないので弁護士も無理。それなら会計士だろうと。
ただ後になって、財務会計の専門家として活躍している中学高校の先輩に、こんな話を聞きました。「お金は人間を幸せにするための道具なのに、お金に人間が振り回されている。会計は人間がお金を支配するための道具だ。だから自分は会計を勉強している」。カッコいい!と思って、それからは、私もそう言うようにしています(笑)。
医師である叔父の仕事の関係で、ベトナムには大学在学中に10回は行きました。早くから「この国で仕事がしたい」と思っていました。当時のベトナムは、今では考えられないほど貧しい国でした。でも若くて活気があり、文化的にも馴染みやすい。それに私は、学校ではずっと落ちこぼれ。いつも周りには自分より優秀な人間がいました。でもベトナムは誰も手をつけていない、ここなら勝てるかもしれないと思ったんです。
アンダーセン時代にベトナムに駐在されました。
蕪木それもたまたまなんですね。就職してから、久しぶりにベトナムに遊びに行った時、ホーチミンにあったアンダーセンの事務所を訪ねて写真を撮影しました。そうしたら後になって、「実は後任の駐在員を探している」と連絡がきた。日本でやっていた監査の仕事にも飽きていたころでしたから、「行きます」と即答。駐在中は日系企業のベトナム進出支援をしていました。そのほかにも、相談がくればなんでもやりました。ベトナムの飲み屋の場所まで聞かれた。本当に楽しかった時期です。
独立したのは、ベトナム出向から3年後。2000年には日本人第1号となるベトナム公認会計士の資格をとっていました。01年にアンダーセンが解散した後、日本に戻る選択肢もあったのですが、結構〝カジュアルに〞辞めてしまったんですよ。当時の上司が「絶対失敗するだろうから、2年以内なら同じポジションと待遇で受け入れる」と言ってくれたので(笑)。それに、私が選択に迷った時に考えるのは、「自分の生きてきた証を残す」ということ。それならベトナムを選ぶべきだろうと。
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株式会社I-GLOCAL代表取締役 公認会計士蕪木 優典
株式会社I-GLOCAL代表取締役
蕪木と共に、共同代表を務めています。もともと別業界にいたのですが、リーマンショックで前職の会社が倒産したことを機に、学生時代から縁のあったベトナムに行くことを決めました。その時、日系の会計事務所で最も成長しているのが当社で、最も活躍している会計士が蕪木でした。入社して1年は蕪木と同じ家で共同生活を送りましたが、彼はそれこそ24時間、仕事のことを考えていましたね。寝る寸前まで仕事の話をし、目覚めた瞬間からその続きを話し始めるんです(笑)。
蕪木の魅力は、大きな愛情と、他者を成長させようとする熱意です。一緒に仕事をしたいと思わせる人間です。先見の明もさすがです。私はベトナムにいて、現場のことに集中してしまいがちなのですが、彼は日本から、ベトナムに進出する日系企業や会計業界の将来を先読みして行動してくれる。とてもありがたいです。