The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社IBJ取締役
経営管理部部長桑原 元就
ニッポンの最高財務責任者=CFOの人物像を紹介する本連載の11回目にご登場願ったのは、IBJの桑原元就氏。学生時代に起業を志したのがきっかけで、会計士資格を取得。31歳の時、8年半勤めた大手監査法人から上場前のベンチャー企業に飛び込み、若きCFOとして活躍している。そんな桑原氏のキャリアストーリーを聞いた。
「元就」と聞けば、誰もが「3本の矢」の逸話を連想するだろう。
「3人目で待望の男児に恵まれた、父が舞い上がり、危うく“信長”か“家康”にされるところでした(笑)。母親が『いじめられるから』と必死で説得して、しぶしぶ妥協したそうです」
その父親は、茨城県古河市で公認会計士事務所を開いており、「小さな頃から『将来は会計士』と言われて育った」。その言葉に導かれ、めでたく夢をかなえ……と思いきや、「会計士だけにはなりたくなかった」のだという。
「個人の税務などがメーンだったようですが、とにかく付き合いの類は多いし仕事もきつそうだし、父の仕事にいいイメージは持てなかったんですよ」
転機は東京都立大学(現首都大学東京)経済学部3年の時に訪れる。就活の時期を迎えたが、これといってやりたい仕事が見つからず、気ばかり焦るある日、独立・起業の情報誌『アントレ』(リクルート)が目に留まった。
「上場したてのサイバーエージェントなどの記事が載っていて、気がつくとその生き方に引き込まれていた。僕らが学生だった2000年頃は、ベンチャー企業にとても勢いがあったんですよ。素直に、自分も会社経営をやってみたい、と思うようになりました」
とはいえ特別に勉強しているわけでもない、お金もツテもない、飛び抜けた才能があるわけでもない人間が、明日にでも起業できるほど、世の中は甘くない。「まずはベンチャーへの就職を目指そう」と桑原氏は考えた。
ただしベンチャー企業ならどこでもいいわけでは、もちろんなかった。
「会社を知るためにもできるだけ多くの社長に会って、直接話を聞いてみたかった。さりとて何もない若造に、すぐ会ってくれるほど暇ではないはず」
何か妙手はないものか、と思案に暮れる頭にひらめいたのが、「弁護士や公認会計士の資格」だった。
「多忙な社長に“手薄”なはずの、深い専門知識は武器になるのでは、と考えたのです。その時から、会計士を違った目で見るようになった(笑)。経済学部にいたし、弁護士は難しそうだし、会計士を目指すことにしました」
「いったん決めたことは、ガーッと行くタイプ」の桑原氏は、大学3年の終わりから本格的な勉強を開始。卒業した年の第二次試験に見事合格を果たす。
この記事の続きを閲覧するには、ご登録 [無料] が必要です。
株式会社IBJ取締役
経営管理部部長桑原 元就
vol.19の目次一覧 |
---|