The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社フォーデジット
取締役CFO冨來 美穂子
多様なデジタルデザインおよびデザインコンサルティングを手がけ、急成長を続けるIT企業、フォーデジット。同社でCFOを務めているのが冨來美穂子氏である。大学卒業後、事業会社に就職するも30歳を目前に退職し、公認会計士第二次試験への挑戦を決断。35歳で合格後、せっかく入所した監査法人での仕事に物足りなさを覚え、“再び生き物のような渦”を求めて事業会社の世界に飛び込んだ。そんな彼女のキャリアストーリーを聞いた。
物理学科の大学同期が次々と大手企業に内定していくのを横目に、冨來氏が選んだ就職先は株式会社リクルート(当時)だった。決め手は単純、「面白い仕事ができそうだから」。だが蓋を開けてみれば、面白かったのは「魅力的なリクルートの人たちと働くこと」であり、仕事内容ではなかったという。システム開発の業務に従事して8年が過ぎた頃、はたと立ち止まった。
「将来ビジョンもなく30歳になって、自分はこのままでいいのかと。その時、何か資格でもとろうと思ったんです。今から医者や弁護士は無理。結果、会計に興味があったわけでもないのですが、食べていけそうな資格をイメージして公認会計士を選んだのです」
だが、当時の会計士試験は合格率6〜7%と狭き門。そこで試験勉強に集中するため、背水の陣を決めリクルートを退職。貯蓄を取り崩しながら食いつなぎ、合格したのは4度目の試験。退職から5年後のことだった。
「最後の試験を受けたのはお金がなくなる寸前。この試験に落ちたら諦めるつもりでした。最初から5年かかると知っていたら、リクルートを辞めていなかったと思います(笑)」
2000年、朝日監査法人(当時)に入所し、主に法定監査に従事した。「会計処理や内部統制のあり方を学んだという意味では、非常に有意義な3年間でした」。だが一方で、違和感を覚えることも少なくなかったという。
「リクルートではシステム開発のために業務分析を行っていましたが、これが非常に大変で。もう業務分析はしたくないと思っていました。でも監査も実は、どんな会計処理、内部統制をしているのかヒアリングして文書にしてと、業務分析と似ている。あれおかしいな、同じことをしているなと(笑)」
冨來氏は事業会社に戻る決断をする。「事業会社は生き物」とはよく語られるところ。リクルート時代を振り返ってみれば、冨來氏にとってその“生き物”のなかで仕事をするほうが性に合っていたのだ。監査法人の退職、結婚をはさんで04年に事業会社に転職する。以降約10年間、複数のベンチャー企業を渡り歩き、主に経理財務業務に従事することになる。
「事業会社で会計士に何ができるのか、漠然と考えてはいましたが、正直この頃もまだキャリアビジョンが定まっておらず、後の自分のキャリアに有効な経験が積めたかというと疑問です。健康面の事情もありフルタイムで働けない時期もありました。でも、やはり事業会社は面白いんですよね」
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株式会社フォーデジット取締役CFO冨來 美穂子