
The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社ジグザグ
取締役北村 康晃
株式会社ジグザグは、〝ウェブインバウンド〟と日本のECサイトをつなげる「越境EC」を支援する。たった〝1行のタグ〟を設置するだけでECサイトの海外対応が完了。同社がショップとユーザーとの間に入り、購入代行からカスタマーサポート、配送まで一気通貫のサービスを提供する。同社のIPOを牽引したのが、北村康晃氏。有限責任あずさ監査法人時代に、複数国での海外駐在を経験。「日本発の価値あるサービスを、世界に広める仕事をしたい」と、事業会社に身を転じた。
北村氏が公認会計士を志したのは大学3年のこと。大学受験も含めて勉強には身が入らず、音楽活動やアルバイトに没頭していたが、先輩たちの就職状況を見て危機感を抱いた。
「誰一人、行きたい会社に行けていなかったんです。遅まきながらようやくスイッチが入りました。本気で何らかの勝負をしないといけないと」
父親が会計士であることから自然とその道が思い浮かんだ。早速、専門学校を訪れ、「会計士」と「税理士」のパンフレットを読んでみた。税理士試験は5科目合格するまで時間がかかる。一方、会計士試験は、学ぶことは多いが短期決戦ができる。自分には会計士試験が性に合っていると直感した。
「でも、勉強を始めてすぐ『これは、そうとう頑張らないと受からないぞ』と当たり前の事実に気づかされました。それからは朝から晩まで専門学校にこもり、勉強漬けの日々です。それまで学業をまともにやっていなかった分、切迫感も大きかった。部活もやめて大学にも行かず、家と専門学校を往復する日々を2年半過ごしました」
初回の公認会計士試験は惜しくも不合格だったが、2度目のトライで無事に合格。2006年、あずさ監査法人に入所した。大阪事務所での10年間は、監査からアドバイザリー業務、さらには海外駐在まで、多岐にわたる経験を積むことになる。
入所後の3年間は、百貨店や製造業、金融機関などの監査経験を重ねた。3年目でインチャージを任されると、若くしてクライアントである大手企業の経営者と直接対話する機会も得た。しかし同時に、次のキャリアプランを考えるようになったのもこの頃だ。
「具体的には、『海外駐在を経験したい』『アドバイザリー業務もやってみたい』と。リーマンショックの後、世の中に不透明感が漂い、円高のせいで日本の製品も売れなくなった。このまま日本にいても尻すぼみになる気がしていたのです。実際に英語の勉強を始め、監査と並行してアドバイザリー業務も手がけるようになりました」
そんな日々を過ごすなか、海外に行くチャンスが訪れた。日本企業が進めるM&A案件で中国の蘇州市へ。
「面白そうなので『やります!』と即答しましたが、現地のKPMGチームもクライアントも日本語を話せない。自分の英語力にもまだ自信がない。そんな現場に1人で行けと……。行きの飛行機の中で『最初の挨拶はどうしたらいいんだ?」と悩んだことを覚えています(笑)。でも、プロジェクトを終えてみれば大きな達成感があり、現地メンバーとは今でも連絡を取り合うくらい仲良くなり、『海外駐在をする』という目標がより明確になりました」
入所7年目からは、ミャンマー、タイ、フィリピンとアジア3カ国に駐在し、日本企業の現地進出を全面的に支援する「ジャパンデスク」を担当。
「当時のミャンマーは、民政移管以降、対外開放政策へと転換し、経済が著しく成長していました。『国のルールを守る』のではなく『国のルールをつくる、変える』そんな場面に立ち会うことができました。当然、仕事は超多忙。さらに、生活インフラが未整備で、何度も体調不良を経験しました。それでも面白かったですね。欧米駐在が人気のなか、人とは一味違う経験ができている実感がありました」
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株式会社ジグザグ取締役北村 康晃
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