The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社SHIFT取締役CFO 兼
経営管理本部本部長福元 啓介
CFO(最高財務責任者)にも、異色の経歴を持つ者はいる。だが宇宙飛行士を夢見て大学院で航空宇宙工学を専攻し、卒業後は引く手あまたの重厚長大企業への就職に背を向け、ネットワークエンジニアの道を選択、という福元啓介氏の“人生序盤”から、現在の姿を推察するのは難しい。一回り、また一回りと軌道を高めた推進力は、いったい何だったのか。
福元氏が「宇宙飛行士になりたい」と名古屋大学工学部に進んだのは、「日本人で宇宙に行ったのは、まだ数人。とにかく人と違うこと、カッコいいことをやりたかった」のが一番の理由だそう。優秀な成績で大学院まで進み、やがて卒業が迫ると、教授から「メーカーの研究所に推薦しよう」と声がかかる。同級生はみな、そうして就職先が決まっていった。だが彼は一人、あえて就活に挑む。
「名だたるメーカーに見学に行ったのですが、なんだかみんな楽しそうに見えなかったんですよ。それにやっぱり、人とは違う何かをやりたかった」
2001年春、就職先に選んだのは、NTTコミュニケーションズだった。
“畑違い”のネットワークエンジニアとして、公衆無線LANサービスや、日本中にLANを張り巡らす広域イーサネット事業の立ち上げに従事する。時あたかも、ネット新時代。「徹夜続きのこともありましたけど、新しい仕組みをつくっていくのは、メチャメチャ楽しかった」と振り返る。同時にそこで、その後の人生を大きく変える“あるもの”に、出合ってもいた。
「会社が、内定者に対して、英語などと一緒に簿記3級の資格を取るよう、義務づけていたのです。それで初めて複式簿記というものに触れたら、これがまた面白い。借方・貸方の2面だけで構築されるシンプルながら奥深い世界は、本当に新鮮でした」
これは極める価値がある、と仕事の傍ら専門学校に通い始めた社会人1年生は、徐々に会計に魅了され、ついには会計士を目指すことになるのだが、そこにはもう一つ、伏線があった。
「資格は取っていなかったのですが、父親が税理士事務所に勤めていたのです。勉強を始めて、これが親父のいる世界なのか、と初めてわかった。で、俺はその上を行ってやろう、と」
「今は楽しいけれど、10年、20年先はわからない」という、サラリーマン生活への漠たる不安も後押しして、福元氏は会社を1年9カ月で辞め、会計士資格取得にチャレンジする。そして03年、猛勉強の甲斐あって、初の挑戦で合格を果たした。
「父親に報告したら、我がことのように喜んでくれました。『ついにこっち側に来たか』っていう感じで(笑)。息子としては、二重の喜びでしたね」
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