公認会計士とは?仕事内容・役割について

公認会計士の仕事は非常に多岐にわたり、また働く場所によっても大きく異なります。ここでは、会計士試験の予備校で教壇に立つ国見健介氏に、公認会計士の役割、独占業務とは何なのか、またその仕事内容を大きく6つに分けて、説明していただきます。
日々、受講生や合格後の公認会計士と接しているカリスマ講師、国見健介先生ならではの、「リアルな会計士像」のご紹介です。
1.公認会計士の役割とは
(1)企業における財務諸表の重要性
公認会計士は、主に企業の成績表である財務諸表が適正に作成されているかをチェックする仕事である監査業務を行っています。監査業務は、公認会計士の資格を保有している人しか行ってはいけない、公認会計士の独占業務です。
では、なぜ、財務諸表が正しく作られているかを監査する必要があるのでしょうか。企業が資金を調達する手段としては、主に、銀行からお金を借りる間接金融と、投資家(株主)からお金を集める直接金融の2つがあります。どちらの場合でも、お金を出す人は、企業の将来性や倒産しないかどうかを知りたいと考えます。そこで、企業は、自分の会社の状態を、財務諸表という成績表によって開示することで、自社は将来性がありますよ、倒産しないですよということを伝える必要があるのです。
そして、銀行や投資家は、企業が毎年公表する財務諸表により、お金を出すかどうかの意思決定を行っています。
(2)監査において会計士が果たす役割
公認会計士の監査は、外部の専門家である公認会計士が、この財務諸表が会社の真実の姿を現していますよということ、つまり、真実の成績表ですよということを保証することにより、経済活動がスムーズに進むようにしているのです。
公認会計士の監査がなければ、財務諸表の信頼性が担保されず、嘘の成績表である粉飾決算が多発してしまい、資本市場は成り立つことができません。このように、監査を通じて、公認会計士は、日本経済を縁の下で支えているのです。
また、公認会計士は税理士登録をすることで税務業務を行うこともできます。税務業務とは、各種税務計算、申告書作成代理、節税などの税務コンサルティング業務を行う業務です。
2.公認会計士の仕事内容とは
公認会計士の仕事は非常に多岐にわたり、また働く場所によっても大きく異なります。ここでは公認会計士の独占業務と、仕事内容を大きく6つに分けて、説明していきます。
(1)「公認会計士の独占業務」について
公認会計士は、監査業務と税務業務を独占業務として行うことができますが、その他にも、専門知識を活用して、コンサルティング業務、企業の中で組織内会計士として活躍することなど幅広い分野で活躍することができます。
以下では、会計士の代表的な仕事内容を説明していきます。
(2)「監査法人」で働く公認会計士の仕事内容
公認会計士が独占業務である監査を行うための事務所のことを監査法人といいます。監査法人に勤務する公認会計士は、上場会社の監査をはじめ、株式公開準備、パブリックセクターの監査など、様々な監査を行っています。
公認会計士試験に合格すると、まずほとんどの方が監査法人に勤務し、スタッフ・シニア・マネージャー・パートナーと出世していきます。パートナーの平均年収は3,000万円以上ともいわれ、会計士の一つの王道のキャリアといえます。
約半分程度の公認会計士は生涯監査法人に所属しており、残りの半数は、監査法人で一定の経験を積んだ後に、別のキャリアの道を進んでいくことになります。
監査法人のより詳細な業務内容は、以下のURLをご参照ください。
(3)「独立開業」する公認会計士の仕事内容
公認会計士は、監査法人で経験を積んだ後に、自分の事務所を独立開業することができます。独立開業すれば一国一城の主になれ、自分の事務所を運営できるので、会計士の王道のキャリアの一つといえます。
独立開業した場合には、大企業の監査を行うのは人的資源の上で難しいので、税務業務や経営コンサルティング業務を行う場合が多いのが実情です。
税務業務やコンサルティング業務も、どの分野で差別化を図るのかを自分で決定し、クライアントに価値を提供していくことは、責任も伴いますが、やりがいも大きいキャリアの一つといえます。
(4)「経営コンサルタント」として働く公認会計士の仕事内容
公認会計士としての独占業務ではないですが、経営コンサルティングをはじめとするコンサルティング業務は、会計士が活躍しやすい分野の一つといえます。
コンサルティング業務は、M&Aアドバイザリー業務、会計コンサルティング、事業再生コンサルティングなど、その範囲も非常に広く、クライアントの抱えている課題に対して解決策を提案し、実行していく業務です。
そのため、より創造的な業務であるため、様々な専門知識を必要としますが、やりがいも大きいキャリアの一つといえます。
(5)「大企業の経理・財務」で働く公認会計士の仕事内容
公認会計士として、大企業の中で活躍している方も多くいます。企業内で活躍している公認会計士は組織内会計士といわれ、大企業の経理部門・財務部門・経営企画室などで活躍しています。
大企業の中で、会社の資金調達を実行したり、事業戦略を考えたり、過去の経営数値から経営者に有用な情報を提供したり、専門知識を活用しながら事業の推進を進めていくことになります。
安定性を重視しながら、専門知識を活用していきたい場合には、お勧めのキャリアの一つといえます。
(6)「ベンチャー企業のCFO」として働く公認会計士の仕事内容
近年、急激に増えているキャリアの一つとして、ベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)のキャリアがあげられます。
ベンチャー企業は、将来株式上場を目指していたり、社会に変化をもたらす新しいサービスを提供したりするため、CFOとして経営者と同じ目線で会社の成長を実現できるのは大きなやりがいがあります。
半面、大企業や監査法人のような安定性の面での保障は少なく、結果を必ず出していくという責任は大きくなると思います。
(7)「金融機関」で働く公認会計士の仕事内容
公認会計士は、銀行・証券・投資銀行・ファンドなどの様々な金融機関の中で活躍することも可能です。金融機関の中で専門知識を活用し、専門的な業務を担っていけることは大きなチャンスがあります。例えば、投資銀行やファンドでは、どの企業に投資をするのかの判断、投資額はいくらにするのか、投資後の経営アドバイスなど多岐にわたる業務内容があります。
今後、AIの進展、フィンテックや仮想通貨の発展などで、既存のルールが大きく変わっていきますので、新しいチャンスも多くなりますので、新しい分野の専門家を目指すのも、一つの魅力的なキャリアではないでしょうか。
3.まとめ
公認会計士の業務内容を簡単に説明してきましたが、その魅力をまとめると、どの士業よりも業務範囲が広いこと、すべての会社で会計士の専門知識を活用する道があることだと思います。
そのため、監査業務・税務業務・コンサルティング業務・CFO業務などご自身がやりたいキャリアを選択できることが大きな魅力といえます。
今後、AIやフィンテックの進展などで、様々な業務が変化していきます。これは会計士業界に限らず、すべての業界で仕事の仕方に大きなchangeがあると思います。そういった変化の時代においても、ビジネスの数値の信頼性や、数値を活用していくことの必要性は必ず価値がある役割・業務として変わらないと思いますので、是非、時代の変化に対応しながら、様々な分野で活躍する公認会計士が増えることを期待しています。
現在、公認会計士を目指そうと検討している方には、公認会計士という職業を少しでも知ってもらい、自分自身が目指すかどうかの判断材料に、また勉強中の方にとってはモチベーション向上のきっかけになれば幸いです。


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