The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社ジーニー
上級執行役員 CFO菊川 淳
最先端テクノロジーを用いた広告配信プラットフォームを主事業とする株式会社ジーニー。2010年に設立、17年に東証マザーズ上場を果たした。現在は米国、シンガポールほか4カ国に拠点を展開し、世界へ羽ばたく準備は万全。20年に同社のCFOに就任したのが、菊川淳氏である。投資ファンドで働きながら公認会計士資格を取得し、独立も経験。過去のキャリアで得たすべての知見を生かし、自社のさらなる成長をけん引している。
将来、ビジネスに携わりたい、経営者になりたい。学生時代はそんな漠然としたイメージだけがあった。
「幼い頃、親戚のおじさんに声をかけられて、夏祭りでカブトムシの販売をしたのが初めてのビジネス経験ですね。それに、両親はともに研究者。子供の目には働いているのか働いていないのかわからない感じで(笑)。そんな仕事の対極として、ビジネスに興味を持ったところもあります」
大学卒業後、入社したのはSAPジャパン株式会社。コンサルタントとしてERPパッケージの導入やプリセールスに従事し、大手物流会社や大手電力・ガス会社を担当した。
会計との接点はこの時に生まれたようだ。ERPというサービスの性質上、先方担当者にはファイナンス系人材が多く、「いずれ経営に携わるにも、数字を用いて定量的に語れるスキルが必要になる」と直観した。そして03年、会計実務の経験を得るため、外資系生命保険会社のINGグループへと転職。主計部に所属となり、連結決算および投資有価証券、デリバティブなどの分析に従事した。
この後も菊川氏は、2〜3年ごとに転職を繰り返していくことになる。
「日系の大手企業だと数年おきにジョブローテーションがありますが、外資系企業は、長く一つのロールを深掘りするキャリアになりがちです。幅広い経験を積みたい、あるいは特定のスキルを身につけたいと思うようになると、必然的に転職を考えることになる。私も、転職の際は必ず〝この会社では、この経験を積む〟と明確にしたうえで動いていました」
次のステップは「INGで学んだ会計の知識を用いて、意思決定や交渉するプロセスを経験する」ことだった。そして07年、菊川氏は米国系投資ファームに転職した。
「投資対象のソーシングから、デットファイナンスによる資金調達、イグジットのプライスを決定してリターンが投資に見合うかどうかを投資委員会と議論する。会計のみならず、様々な経営エッセンスが詰まった業務でしたね。最初はわからないことばかりだったのですが、それでも最後まで〝やり切る〟経験を積めたのは、学びとして大きかったと思います」
ハードな業務の合間をぬって会計士資格を取得したのも、米国系投資ファームに在籍していた頃だ。ING時代に会計実務を経験したものの「いずれ経営側にまわり、重要な意思決定を担うには、会計をより体系的に理解する必要がある」と試験挑戦を決めた。
しかし、一説には「合格まで最低3000時間の勉強が必要」とも言われる会計士試験だ。会社員でありながら、どんな試験対策をして短期合格を勝ち得たのだろう。
「入社時点から『会計士資格を取りたいのでまとまった休みがほしい』と話をつけてあったんです。その1カ月間で何を勉強すべきか、あらかじめスプレッドシートにまとめてから臨みました。多い時で1日18時間、食事中も音声を2倍速で流して聴いて勉強していましたね。もちろん大変でしたが、会計実務は経験済みですし、会計基準についても理解していたことから、ゼロから積み上げるべきものは比較的少なかったと思います。なにより、社会人は文章を書く能力が学生に比べて明らかに高い。その点では、けっこう有利だったともいえます」
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株式会社ジーニー上級執行役員 CFO菊川 淳