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Accountant's magazine vol.26

-アカウンタンツマガジン-
2014年10月01日発行

4年目を迎えた公認会計士「企業研修出向制度」の取り組み

「公認会計士の未来価値を大きく高めてくれるオプション。成長と進化を信じて挑戦しよう」

有限会社ナレッジネットワーク
代表取締役社長 公認会計士中田 清穂

2010年から日本CFO協会と新日本有限責任監査法人がスタートさせた、一般事業会社への公認会計士「研修出向制度」。毎年、出向者を集めて開催される研修「蓼科会議」で、今回初めてコメンテーターを務め、11月の集中講義では財務会計の講師を務める予定の中田清穂氏(有限会社ナレッジネットワーク代表取締役社長)に、本制度を活用する際の心構え、若き会計士に対する期待をうかがった。

私がこの制度のことを知ったのは、集中講義で管理会計担当の中澤進氏(日本CFO協会主任研究委員/株式会社ビジネスブレイン太田昭和会計システム研究所所長)から、「こういう制度があるが、講義で財務会計を教えてみないか」と声をかけていただいたのがきっかけです。

しかし、聞けば参加者は、監査法人でそれなりの経験を積み、インチャージ以上のポジションにある会計士とのこと。「そんな人たちに、監査の現場から離れて久しいにもかかわらず、財務会計の何を教えるのか」と訝る私に対し、中澤氏は、「監査というものが、どんどんマニュアル的、形式的なものになっていて、“木を見て森を見ず”の状況が生まれている。それではいけないんだ、ということを語ってもらいたい」と言われました。

根底にあるのは、「会計基準は一応理解しているものの、その背景にある考え方とか、今の日本の会計制度が抱える矛盾とか、その矛盾が今後どうなりそうなのか、といった観点から考察を加える時間や習慣自体が、監査法人の中にいる専門家にも欠けているのではないか」という現状認識です。それは、私が常日頃感じている問題意識と合致するものでした。

私は監査業務に7年間従事した後、連結経営システムの構築に取り組み、内部統制やIFRS導入などに関するコンサルティングに携わりました。会計制度全体を俯瞰しつつ、そのバックボーンを理解しようと努めるのは、ある意味仕事の一部といえます。

そうした視点からは、例えば企業がIFRSを導入したのはいいけれど、大半の現場では、文字どおりマニュアルに従ってこなしているだけ、といった実態が見えてきます。基準を貫いている“意思”の部分までわかっている例は、ほとんどありません。これだと、導入のメリットを十分引き出すことができないばかりか、将来重大な齟齬をきたす可能性だって否定できないでしょう。

中澤氏のおっしゃる趣旨を理解した私は、そのオファーを受けることに決め、8月22日・23日に開かれた蓼科会議に、コメンテーターとして、初めて参加しました。受講者は30名ほどで、「皆すごく真面目」というのが、第一印象でしたね(笑)。

会議では、事前課題として、講演をされた浦田晴之氏がCFOを務めるオリックス株式会社のアニュアルレポート・有価証券報告書を基にした質問の提出が求められていたのですが、数が多いだけでなく、ものすごく深い内容のものが多かった。それだけでも、すごい人たちがこの制度に参加しているのだ、と実感することができました。

ただし、不満に感じたこともありました。監査業務で鍛えられているだけあって、みんな目の前の状況を整理してまとめ上げる能力には長けています。でも、やはり監査にも求められる資質であるはずの、課題を抽出して分析を加えるという点に関しては、もの足りなさを禁じえなかったのです。

会議では、4つのグループに分かれて討議を行い、2日目に代表者がその結果を発表しました。テーマは「CFOのミッションについて」。

聞いていると、CFOの一般的な役割そのものについては、非常によくポイントを押さえたわかりやすい発表だったのですが、ならば今の日本のCFOがその機能を十分果たせているのか、果たせていないとしたらどこに問題があるのか、といった観点からテーマに切り込んだグループは、残念ながら一つもありませんでした。

みんな事業会社に出向しているわけですが、経理・財務スタッフのゴールの一つは、CFOですよね。そう考えれば、そのゴールについて、一人ひとりが“あるべき像”を明確に持ったうえで、現実はどうなんだろうと、常に検証していくというのが、最低限の心構えなのではないでしょうか。例えばそういう姿勢を持って臨まなかったら、せっかく事業会社に出ている意味も減殺されてしまう、と私は思うのです。

一事が万事で、出向するからには、職場の上司に言われたことを器用にこなすだけではダメ。常に「この仕事は何のためにやるのか」「会社にとって、どういう意味があるのか」といった問題意識を持って、仕事に取り組まなければなりません。

例えば、「理想のCFOとは何か、追求しよう」というような、はっきりした目的を携えて行くことも重要です。そういう人と、なんとなく事業会社に出向してみれば新しい世界が見えてくるのではないか、というスタンスの人とでは、3年間の出向期間中、得るものに大きな差が出るのは間違いありません。

やや厳しめのことを言いましたけれど、この制度を利用して事業会社に出ること自体には、非常に大きな意味があります。一生、監査をやって生きていきたいという人にとっても、それは得難い経験になるはず。日頃、会社側から提出される書類がどのようにつくられているのかを知れば、出てきた数字をいろんな角度から見られるようになるでしょう。ともすればステレオタイプと称される監査から脱却し、“見こぼし〞を減らすことも期待できます。

出向すれば、基本的に企業サイドのニーズで配属されますから、否応なしに不得意分野にかかわる機会が増えるのも、自らの能力を高めることにつながります。不得手なことに取り組むというのは、まさに自分を試すチャンス。それをやることで、自分に足りないものも自覚できるのです。

自らの体験も踏まえて、若い会計士にメッセージを送るとしたら、自分の強みと弱みを客観的に見ることのできる人間になってほしい、ということです。会計という強い部分に軸足を置きながら、弱点を見つけて克服していく。机上の勉強だけでなく、実践的な経験としてそれを積み重ねていけたら、会計士としての活躍の場は、どんどん広げていけるのです。そのきっかけを掴む意味でも、この制度を積極的に活用してもらいたいと思います。

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Profile

有限会社ナレッジネットワーク 代表取締役社長 公認会計士 中田 清穂

有限会社ナレッジネットワーク代表取締役社長 公認会計士中田 清穂

1984年、明治大学商学部卒業。青山監査法人にて、米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクトに従事。97年、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。上場企業400社以上にシステムを導入後、独立。現在は、IFRS導入支援コンサルティングを展開。主な著書に、『連結経営管理の実務』、『わかった気になるIFRS』、『やさしく深掘りIFRSの概念フレームワーク』がある。

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