The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社オトバンク
取締役CFO新井 成道
声優が朗読する名作を耳で聴く「オーディオブック」。新井成道氏が、欧米ではポピュラーなそのメディアの市場拡大に挑んでいるオトバンクに入社したのは、2017年の2月である。監査法人時代に芽生えた「公認会計士のゼネラリストを目指す」という目標の究極の姿と信じるCFOとして奮闘する今、その思いを語ってもらった。
中学時代は、プロサッカー選手になるのが夢だった。
「ポジションは〝中盤〞。点を取るFWでもないし、身を挺して守るDFでもない。この性分は、生まれつきのものです。地区選抜に選ばれたりして、本気でプロを考えていた時期もありましたが、中学時代に骨折したことを機に、早々に諦めました。気持ちが折れるのも早かった(笑)」
中央大学商学部商業・貿易学科に進学したのは、「当時、何となく英語を生かした仕事に価値を感じていたから」。しかし、ほどなく実際の仕事に直結するとは思えない授業に魅力を感じることができず、大学を辞めて別の道に進むことを考え始めたという。そんなある日、その後の人生を決定づける転機が訪れる。
「高校時代の友人に相談したら、『友達が公認会計士の試験を目指しているんだって。お前数学得意だったよね?だったら目指してみたら』と言われたんですよ。それまで会計士なんて頭の片隅にもなかったんですけど、『そうなのか』って。本当に、そんなノリで勉強を始めたわけです」
中大には、初めから資格取得を目指して入学してくる学生も多い。それをサポートする経理研究所という〝学内スクール〞もある。その環境に置かれることで、〝軽いノリ〞は徐々に本気度を増していく。だが、大学には〝誘惑〞も存在した。
「1、2年生のうちは、勉強の傍らいろんなサークルをかけもちしたり、週3回は雀荘で卓を囲んだり。普通の学生らしい生活を送っていましたね」
それで合格できるほど甘い世界では、やはりなかった。3年生で受けた短答試験は、見事に失敗。親から「経済的な支援は4年生まで」と言い渡されていた新井氏は、ここで覚悟を決め、「思い出したくない」ほどの勉強漬けの日々をスタートさせる。
「勉強だけに集中するため、サークル活動や雀荘通いをやめ、友達と会うこともほとんどなくなった。そうやって退路を断ったわけです」
悲壮な決意を胸に、土日も盆暮れもなく勉強に明け暮れた奮闘は、1年後に報われる。
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株式会社オトバンク取締役CFO新井 成道