公認会計士「研修出向制度」体験者リポート
エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ株式会社
グループ財務会計部門四社税務担当工藤 保浩
大学院を出られているのですね。
工藤大学4年の時に公認会計士試験に合格したのですが、会計基準の成り立ちなどをもう少し勉強したかったのです。折しもIFRSが入ってくるタイミングでいろいろと騒がれていたので、それをテーマに「IFRS導入により判断基準が増えることは、投資家にとってメリットではないか」という内容の修士論文を書きました。
監査法人に入って感じたことは?
工藤担当したのは化粧品・健康食品関連、機械関連など、メーカーが多かったですね。ものをつくってから売るまでの一連の流れを見られたことは、大変有意義な経験になりました。同時に、実際に企業の担当者の話を聞き、監査に携わるなかで、「今までやってきた勉強だけでは足りないぞ」という思いも強くしました。
例えば、どんなところに?
工藤内部統制監査が導入され、会社側が作成したフローチャートやRCM(リスクに対応する統制活動の状況を定義した文書)をチェックしなければならなくなったのですが、どこが大事なポイントなのかを見極めるのがかなり大変でした。「このあたり」と一般的にはいえるのだけれど、「当社はずっとこうやってきたんですよ」というような、会社なりの考え、思いがあるわけですね。それに対応するとなると、“本の知識”だけでは不十分なのです。
そうしたことが、一般企業への出向の動機になった。
工藤そうです。企業活動を理解していないと、根本的なチェックは難しい。「企業の内部を知りたい」という問題意識は、監査法人入社1年後ぐらいには持ち始めていました。
監査を担当してもう一つ感じたのは、税務を非常に気にしているということ。考えてみれば当然で、会計上の利益を得た後に税務調整が行われ、しかるべきキャッシュアウトが生じるわけですから、企業経営にとっては極めて重要なファクターです。そこにも興味を覚えました。それで、「今後どんな仕事をしたいか」という監査法人の自己申告書に、「税務関係の業務を経験してみたい」と書いたんですね。数カ月後、「税務の人材を募集している企業があるから、行ってみないか」と声をかけられたのが、当社に出向したいきさつです。今振り返っても、まさに“渡りに舟”でした。
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エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ株式会社グループ財務会計部門四社税務担当工藤 保浩
エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ株式会社取締役アカウンティング事業部長 内部監査士
NTTグループは、2010年に南アフリカのIT大手ディメンション・データを買収し、グローバル化を加速させた。IFRSや国際税制の大きな流れへの対応も、強く意識されてきた。そうした状況を踏まえ、会計、税務の専門家のスキル、ノウハウがぜひともほしいと考えていたところに、新日本有限責任監査法人から出向制度の提案があり、採用させていただくことにした。
一昨年、連結決算の部門に1人入ってもらっており、工藤さんは2人目だ。会計士というと「先生」のイメージがあり、最初は溶け込んでもらえるか不安もあったのだが、両人とも仲間意識を持って働いてくれており、期待どおりの戦力になっているだけでなく、周囲のいい刺激にもなっている。
3年という出向期間は、本人たちにとっても我々にとってもベストなのではないか。退社後のパフォーマンスのダウンは痛いが、そこは残った人間が力をつけてカバーする。その繰り返しで、組織としての実力を蓄えたい。継続的に採用したいと考えている。