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Accountant's magazine vol.82

-アカウンタンツマガジン-
2026年07月01日発行

税理士の肖像

「中小企業の経営支援のため。税理士業界をよくするため。僕の活動エネルギーの源泉はここにあり、ずっと変わらない」

税理士法人坂本&パートナー 理事長
TKC全国会/TKC全国政経研究会 会長坂本 孝司

会計士の肖像

「税理士になる」。高校生時代に考え抜いた職業選択

自立心にあふれ、25歳の時に地元・静岡県浜松市で会計事務所を開業した坂本孝司は、以降45年間にわたり、個人事業者や中小企業の経営支援に奔走してきた。自ら掲げた「会計で会社を強くする」というスローガンには、税理士としての使命が込められている。そして坂本は、会計学の研究者としても功績を積んでおり、さらには、国内最大級の職業会計人集団であるTKC全国会での活動も長く続けている。根底にあるのは、「税理士の社会的価値の向上」という大きなビジョンだ。

リーダーシップがあったかどうかはわからないけれど、子供の頃から自立心は強かったと思いますね。小学校では児童会長をやり、中学校では生徒会長をやり……周囲に推されての役割でしたが、まぁ田舎の〝できた子〟という感じ(笑)。スポーツのほうも小・中学校時代は陸上部やバレーボール部に入り、わりに頑張ったんですよ。ただ、「このフィールドでは勝てない」と思うと見極めが早いというか、意気地がなくて全うできませんでしたが。それと、昔のスポーツ部は理不尽に厳しくてね。顧問の先生や先輩から理由なく殴られたりするのがイヤで、耐えられなかった。納得できない状況に甘んじるのは自分には無理だと早くからわかっていたという意味では、やはり自立心が強かったように思います。

県下有数の進学校である浜松北高校に入学できた時は嬉しくて、将来への希望に燃えていました。ただ、それは2年の夏あたりまで。次の進路を意識し始めた頃、親から「大学に行かせられたとしても国立が精一杯」と言われ、将来選択に制約が課せられたのです。さらには、大学卒業後は浜松に戻って長男としての役目を果たすようにという条件付き。うちは開拓農家で裕福じゃなかったから仕方ないとは思ったけれど、そうした〝枠〟のなかで将来を考えるのはけっこうきつかったですね。

そんなある日、図書館で職業紹介の本を見ていたら、国家資格に目が留まったのです。自営業はよさそうだと。僕は文系だから、まずは弁護士という話になるわけですが、当時の司法試験合格率は1%前後。浪人など許される環境ではないから勝負は懸けられません。残るは公認会計士か税理士。本には、税理士というのは中小企業の経営アドバイザーであると書かれていて、これはいけそうだとピンときたんですよ。浜松には町工場や小さな会社がたくさんありますからね、地元で仕事ができる。こうして僕は、高校2年生の時に税理士になると決めたのですが、制約があったからこそ考え抜き、最善の道を選べたのだと思っています。

大学選びにあたって周到に調べた結果、当時の国立一期校で会計学科を設置していたのは神戸大学だけだった。さらに、希少な税務会計論の講座があることを知った坂本は「ドンピシャ」だと確信し、神戸大学を受験。受験勉強は完全独学だったが、強い気概で臨んだことで、無事に現役合格を果たす。

六甲山の中腹にあった学生寮で新生活をスタートさせました。当時の寮には学生運動の名残があって、けっこうなカオス状態だったんですよ。夜中に大勢で大騒ぎするとか、その時々に空いている部屋で寝泊まりするとか、まぁ乱れた生活で。生活費を稼ぐためのバイトもあったし、一方では羽を伸ばしてみたりと、最初の1年間はちょっと遊んじゃった感じですかね。

たまに親がお金を送ってくれていたのですが、ある時、現金封筒に入っていた札に土が付いていたことがあったんです。僕が無心したから、親父が農作業をしながら急いで工面したのだと想像すると……胸に迫るものがあった。このままではダメだと思い、生活を一変させました。寮を出て安い下宿に移り、家庭教師のバイトを増やし、税理士試験に向けて本腰を入れ始めたのです。最初は簿記の意味すらわからず、独学だったから苦労したけれど、2年生のうちに何とか簿記3級の試験に合格することができました。

専門課程に進んでからは、会計学や税務会計論の権威である武田隆二先生のゼミに、狭き門ながら運よく入れました。ここで落ちていたら今の僕はなかったと思う。ただ当時は、周りは公認会計士を目指す人ばかり。税理士志望は僕一人で、とてもそれを言えるような雰囲気ではなかったんですよ。

公言したのは卒業間近になってから。学部の事務局から「就職が決まっていないのはあなただけだ」と叱られ、税理士試験を目指していることを言わざるを得なくなったのです。その旨を武田先生に相談し、すでに数科目合格していることを伝えたら、とても意外な顔をされて、「それなら会計士試験に切り替えなさい」と。ここからがせめぎ合いです(笑)。僕には浜松に帰って開業する決心があると話しても、先生は「志が低い」とおっしゃる。応酬の末、「日本一の税理士になりますから」と言ったところで、やっと「よし、それを目指しなさい」と認めていただいたという経緯です。

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Profile

税理士法人坂本&パートナー 理事長 TKC全国会/TKC全国政経研究会 会長 坂本 孝司

税理士法人坂本&パートナー 理事長TKC全国会/TKC全国政経研究会 会長坂本 孝司

1956年2月26日
静岡県浜松市生まれ
1978年3月
神戸大学経営学部卒業
1978年12月
税理士試験合格
1981年4月
坂本孝司税理士事務所
(現税理士法人坂本&パートナー)設立 TKC入会
1995年3月
東京大学大学院
法学政治学研究科
修士課程修了
1998年3月
同大学院博士課程
単位取得退学
2002年8月
米国公認会計士試験合格
2011年3月
愛知工業大学大学院にて博士号取得
2012年4月
愛知工業大学大学院
経営学部教授就任
2012年7月
TKC静岡会会長に就任
2017年1月
TKC全国会/TKC全国政経研究会
会長に就任

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