事務所探訪
EY新日本有限責任監査法人
Digital Audit推進部
AIの発達によって多くの仕事で自動化が進み、会計士という職業が駆逐されるのではないか――そんな議論もあるなか、EY新日本有限責任監査法人はデジタルテクノロジーと会計人材を融合させながら、新たな時代の監査業務を見据えている。
そして、デジタル×監査業務の最前線を牽引するのは、2017年に始動したDigital Audit推進部だ。部長の加藤信彦氏は、同部のミッションをこう語る。
「あらゆる業界においてデジタルトランスフォーメーション(DX)が進むなか、当法人の経営陣も変革に強くコミットし、監査業務のDXを進めています。目指しているのは、デジタルの活用によってリアルタイムに仕訳データをやり取りする継続的監査です。これまでは四半期決算などでリスクが判明していたところ、データをリアルタイムに分析することで異常値のアラートを早めに出すことができるようになります」
2020年代には普及が見込まれる継続的監査を支えるのはEYが独自に開発した情報基盤だ。さらに、在庫把握にドローンを用いたり、新ビジネスではブロックチェーンを解析したり、テクノロジーをフルに活用したりしながら、デジタルと融合した監査を目指す。
3度目といわれるAIブームを迎え、会計監査業務にもAIが浸透しつつあるなか、同部はEY新日本のカルチャー、グローバルに立脚するネットワークの強みを背景にDXを進める。
「アットホームな社風、企業風土を背景に組織をつくり、多様な個性を生かしてきました。それはグローバル全体の距離感の近さ、信頼関係にもつながっています。継続的監査を支えるデータプラットフォーム、データ分析ツールはグローバルで開発され、150を超える国と地域に展開するEYのメンバーファームのすべてで活用されているのです。世界中で起きている監査のイノベーションを即時に享受できるのは大きな強みになるでしょう。さらに、私たち日本からグローバルに向けた発信にも注力しています」
デジタル監査ツールの研究・開発を担うのは、アシュアランステクノロジー部だ。同部には、理工学部で統計学を学んだ理系会計士の市原直通氏をはじめ、高度なプログラミングやデータアナリティクスに長けたエンジニア、データアナリストが多く在籍。テクノロジー企業を思わせる充実の開発体制で、会計仕訳の異常を検知するツール「Helix GLAD」を開発。品質と先進性が評価され、世界各国のEYメンバーファームで導入が進められている。
「監査経験豊富な公認会計士のほか、データサイエンティスト、エンジニアやコンサルタントなど、様々なキャリアを持つメンバーが揃い、事業部も合わせると200名以上で監査現場をサポートしています。公認会計士だけではなく、今後も多様な人材を増やしていきたいですね」
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EY新日本有限責任監査法人Digital Audit推進部加藤 信彦
1995年、横浜国立大学経営学部卒業。製造業や銀行業を中心に、20年以上、会計監査業務やアドバイザリー業務に従事。EY Japanアシュアランス部門のデジタルリーダーとしてAI、RPA、ブロックチェーン、ドローンなどの最先端技術を監査業務に応用するための戦略策定、ITインフラ環境整備、データアナリティクス活用推進を所管。公認会計士・米国公認会計士。