会計業界の起業人
株式会社ストライク
代表取締役荒井 邦彦
中堅・中小企業のM&Aニーズにこたえようと、荒井氏が株式会社ストライクを設立したのは、監査法人在職中の1997年のこと。そして、国内初のインターネットM&A市場「SMART™」を立ち上げると、ネット上にM&A案件の匿名情報を公開。会社の譲渡・買収を検討する企業が、スピーディに情報配信できる仕組みを整えた。現在、同市場の登録数は1000件以上。累計成約実績は110件を超え、取引額は326億円に達した。
「監査法人勤務時代にM&Aのコンサルティング業務に携わったわけではありません。けれど、やってみなくては始まらない。何事も『なせば成る』の精神が大切なんだと思います」
漠然とではあったが、学生時代から「将来は自分で事業を起こしたい」と考えていた。そんな時、たまたま大学で目にしたのが公認会計士について書かれた受験予備校のパンフレット。「会計・財務のプロとして、企業経営に必要な専門知識が得られる」という言葉に、まずは資格取得を目指すことにした。
「大学4年で第二次試験に合格すると、あちこちの監査法人から誘いの電話をもらいました。ところが、太田昭和監査法人(現新日本監査法人)だけが連絡してこない。悔しくて、自分から電話し、入所したというわけです(笑)」
在職中は、監査業務もさることながら、中堅企業の財務デューデリジェンスや株式公開の支援業務にも数多く携わることができた。私財を投じ、すべての責任を負って新たな事業をつくり上げていく経営者の迫力と発想の豊かさに、圧倒される毎日。多くの経営者からたくさんのことを学んだという。
「そんなある日、担当していたクライアント先で、企業を買収・合併するというM&Aの仕組みを知ったんです。そのダイナミックさ、アドバイザリー報酬の高さに惹かれた私は、M&A仲介事業での起業を決意しました」
だが、明確な事業計画や仕事の当てがあったわけではない。そんな荒井氏の背中を押してくれたのが、仕事で出会った経営者たちの言葉だった。
「『大丈夫、君なら何とかなる』と。多くの苦労や困難を自らの力で乗り越えてきた彼らの応援は、とてつもなく重く、大きな自信につながりました」
それから間もなく、在職中に会社登記手続きを済ませると、起業に向かう揺るぎない覚悟を決めた。
「松下幸之助も、本田宗一郎も、著名な経営者って、みんな20代で起業していますよね。上司にも恵まれ、仕事も面白かったのですが、私も20代のうちに起業しなくては、と思ったのです」
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株式会社ストライク代表取締役荒井 邦彦