The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社サイバーセキュリティクラウド
取締役 CFO倉田 雅史
「どうすれば同期の優秀な会計士たちと差別化できるか、ずっと考えていました」と倉田雅史氏は言う。監査法人に勤務しながら業務時間外ではベンチャー企業数社をボランティアで支援した。その後、自社開発のセキュリティサービス「攻撃遮断くん」などを手掛ける株式会社サイバーセキュリティクラウドに転職。倉田氏の底力は“20代の上場会社CFO”として開花した。
理系一家に生まれ、高校時代は建築家を目指した。しかし、同じクラスに芸術的センスでは「一生かなわない」同級生がいたことで進路を変更する。
「世の中には、芸術センスの塊みたいな人がまだまだいると思うと、これは無理だと勝手に挫折(笑)。そう考えた結果、得意だった数学を生かせる経営学部を選びました」
受験勉強をせずに高校・大学とエスカレーター式で進学したこともあり、大学ではしっかり時間を使って勉強しようと考え、難関資格である公認会計士試験に挑戦することを決めた。
「大学受験とは異なり、公認会計士の勉強は全員ほぼゼロからのスタートです。自分も努力すれば絶対受かるという根拠のない自信がありました。合格後は、大学3年時に太陽有限責任監査法人に入所しました。大手監査法人からも内定を得ましたが、同期の優秀な会計士と差別化するにはどうしたらよいか考え、彼らとは違う環境で、若手でもどんどん仕事を振ってもらえる準大手の監査法人を選んだのです」
しかし、倉田氏のキャリアのスタートは、ほろ苦いものだった。「まだ大学生で、監査の“か”の字もわからない状態」のままアサインされた最初の案件では、うまく活躍できず途中でチームから外されてしまう。
「“いつか見返してやる”というところからキャリアが始まった。それでどうしたかというと、これは今も私のスタイルなのですが、いろんな人に話を聞いて回る、優秀な人を真似することを意識しました。業務外も含めてコミュニケーションを取り続けているうちに、デキる人の共通点が見えてきて、それらを自分に取り入れていきました。そうやって少しずつ仕事を覚え、最初のマイナス評価を挽回していったのです」
太陽には4年半在籍し、主に担当したのはIT企業の監査業務。ただ、監査の仕事が面白くなったのは入社3年目から。倉田氏はその頃からベンチャー企業支援をボランティアで開始。1社目は高校・大学の同級生の会社。一昨年に上場したIT系の人材サービス会社、Branding Engineerだ。
「業務管理用のエクセルシートをつくったり、事業計画策定などに携わったり。ベンチャーに興味があったので、自分の勉強のために『無償でいいから手伝わせてくれ』と自分から頼んだのです。太陽でIPO準備の会社を担当する過程で、いつか自分も上場を目指す会社に入り、CFOになりたいと思うようになりました。ボランティアを続けるうちに、事業会社側の視点で物事を考えられるようになり、監査の仕事がより楽しくなっていった。事業会社の内部でどんな議論が交わされ、意思決定が行われているかを知ると、監査の取り組み方も変わり、クライアントに対するアドバイスも深くなったことを実感。2年ほどで5、6社手伝いましたが、本業を圧迫してはいけないので、プライベートの時間を削って土日と平日深夜で続けていました」
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株式会社サイバーセキュリティクラウド取締役 CFO倉田 雅史