公認会計士「研修出向制度」体験者リポート
株式会社クラレ
経理・財務本部 経理部水地 一彰
大学を出て、一度一般企業に入社していますね。
水地公認会計士の資格を取ろうと思ったのは、社会人になってからです。仕事に100%満足していなかったのと、とある個人的な理由で、どうしても会計士になりたい、と決意しました。大学は商学部だったものの、簿記や会計を学んではいなかったので、一からの勉強でした。
監査法人では、どんな企業を担当されたのですか?
水地メインで担当したのは、連結子会社を300社ほど持つ、日本を代表するグローバル企業でした。海外も含めてグループ経営はすべて本社がマネジメントしていて、在庫管理一つとっても、現場レベルまで徹底されていました。たまに別の会社の監査を手伝うことがあったのですが、普通の企業なのに、「前述した某社と比べると、お金にまつわる管理の仕方が甘い」と感じてしまうほど。一事が万事で、いいものづくりをし、頻繁に経済新聞に取り上げられるような企業は、ベースのところから違うんだ、ということを学びましたね。
「出向制度」には、自ら手を挙げたのですか?
水地はい。たまたま同じ監査チームの近しかった先輩がこの制度の「第1期生」として出向し、2期目には私と同期の人間が応募しました。彼らと話すと、異口同音に「出向しないと得られない経験がある。出ない手はないよ」と言うわけです。私自身、会計士の資格は欲しかったけれども、必ずしも監査一筋で、と心に決めていたわけではありませんでした。それで、会計士登録した翌年の2012年に応募したのです。
事前に希望業種をざっくりと聞かれたのですが、「金融は自信がないのでそれ以外で」と。あとはすでに多くの会計士がいるような企業は避けてほしい、とお願いしました。せっかく出向するのだから、できるだけ監査法人とは違った環境の中で仕事をしてみたかったからです。
クラレの印象は?
水地テレビCMは知っていましたが、最初は正直、何かの素材をつくっているメーカーという程度の認識でした。経理部に配属された2日目、「監査法人とのミーティングに出てほしい」と言われたのです。同席し話を聞いていたら、先輩社員が監査法人の会計士との問答に、互角以上に渡り合っている。驚きました。えらいところに来てしまったと(笑)。
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株式会社クラレ経理・財務本部 経理部水地 一彰
株式会社クラレ執行役員 経理・財務本部長
経理部には現在3名の会計士がいる。いずれも日本CFO協会の「出向制度」で来てもらった人たちだが、みんな優秀なうえにオープンマインドに取り組んでもらっており感謝している。
経理・財務の仕事には判断上のグレーゾーンがつきものだ。例えば従来はある会計情報を開示すべきか否かは実務慣行に従うことが多かったが、事業のグローバル化や会計制度の改革など環境が大きく変化するなかで明確な開示基準を持つ必要性が強く意識されるようになった。しかし、いかんせん我々実務家はそうした理論的な改革の話になると弱い。その点、水地さんの専門家としての提案はいつも目からウロコで大きな刺激になっている。「出向制度」のおかげで内部のディスカッションの質も高まり組織も活性化した。とにかくやってみようの精神で利用し始めた制度だが、今後も大いに活用したい。