
The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社TOブックス
取締役 コーポレート本部長鳥海 裕喜

『本好きの下剋上』をはじめ、Web小説発のヒット作をコミカライズ、アニメ化、舞台化と多面的に展開するTOブックス。同社のCFO・取締役コーポレート本部長を務めるのが鳥海裕喜氏だ。有限責任 あずさ監査法人で約11年にわたり上場会社監査やIPO支援に携わったのち、事業会社へ転身。TOブックスの上場準備を主導した。
野球漬けだった毎日が、大学入学で一変した。野球人生にひと区切りをつけると、本気で打ち込めるものがない寂しさが募る。
「斎藤佑樹さんや田中将大さんといった甲子園のスターと同世代なんです。彼らが大活躍する姿を見るにつけ、自分も何者かにならねば、と」
目をつけたのが公認会計士資格だ。「将来はビジネスパーソンに」と考えていた鳥海氏。会計はビジネスの共通言語であり、汎用性が高い。ビジネスパーソンとして成長するための基礎になると期待した。大学2年次からダブルスクールに通い、4年次の2010年11月に現役合格を果たした。
「大学の勉強にアルバイトに会計士試験。今考えると〝よくやったな〟と。ただ個人的には、頑張った分だけ結果が出やすい資格、努力が報われやすい資格だと思っています」
11年4月、有限責任 あずさ監査法人へ入所。約11年間、通信、製造、小売り、不動産、金融など幅広い業種の上場会社監査を担当した。IFRS導入支援やデューデリジェンス、IPO支援などアドバイザリー業務にも従事。組織再編の波も二度経験し、結果として多様なクライアントにかかわった。
なかでも鳥海氏のキャリアのベースとなった業務がある。一つは約30人規模の大型監査チームでのこと。要求水準が高いある上場企業がクライアントで、決算期にはチーム全員が徹夜するハードな現場。退所までの数年間を濃密に過ごした。
「いわゆる体育会的な社風のクライアントで、ずっとご一緒していると監査チームもどこか似てくるんです。優秀かつ情熱的な先輩・同僚に囲まれて、家族のような一体感がありました。自分の仕事の基盤はここでつくられたと言っていいですね」
もう一つは、IPOを目指す小規模クライアントを担当した際の経験だ。20代前半にして実質的な現場責任者を任され、経営層と直接対峙する機会を得た。
「ショートレビューの段階からかかわって、その会社が上場するまで携わらせてもらいました。成長意欲の高い経営者は、業界や自社の10年先を見据えてビジネスを語る。その視座の高さに触れたことで、自分もいつかは事業側に回ってみたいと思うようになりました。自分の経験を事業会社で生かしたい、見える世界を広げたい、という気持ちでした」
あの頃は必死だったと、鳥海氏は述懐する。特に20代前半の頃は、四半期の打ち上げで「なぜか泣いてしまうことがあった」というから尋常でない。
「誰かに怒られたわけでもいじめられたわけでもない。仕事が思いどおりに進まなかった悔しさなのか、もっとうまくできたという反省なのか、今となっては理由もわかりません。でも、それだけ仕事に必死に向き合っていたのだと思います」
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株式会社TOブックス取締役 コーポレート本部長鳥海 裕喜
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