公認会計士「研修出向制度」体験者リポート
アスクル株式会社
経理功刀 紀英
監査法人への入所は2004年。どんな企業を担当したのですか?
功刀最初は、福島事務所に勤務しました。自分にとっては縁もゆかりもない土地。とにかく人手が足りなくて事務所全体が忙しかったですね。そんな事情もあって、県内の上場企業、金融機関、小売、学校法人等々、業種としてはいろいろ一度に担当しました。“担当”といっても、胸を張ってクライアントのもとに行くという感じではなかったですね。資格を取るためにあんなに勉強したのに、社会に出たら知らないことばかり。最初のうちは自分の無力さに歯がゆい思いの連続でした。
印象に残る仕事は?
功刀地域に根ざした比較的規模の小さなクライアントの監査は、大企業と違って組織の全体を見ることができるし、きつかったけれどやりがいがありました。当時から地方経済は非常に厳しい環境で、クライアントは決算をまとめることに必死なんですよ。自分の判断一つで数字が大きく変わってしまいますから、こちらもそれなりの責任を自覚して臨まなければいけない。“駆け出し”の身にとって、プレッシャーは相当なものでした。そんな案件を重ねることで、自分が鍛えられたのは事実だと思います。その後、東京に“転勤”になって2年間、今度は大企業を中心に担当しましたが、福島での4年半は、本当にかけがえのない経験で優秀な先輩方にとてもよく指導していただきました。
出向制度に応募した動機を教えてください。
功刀身近にこの制度で出向した人がいましたし、事業会社への出向自体に興味は持っていました。福島で様々な業種を経験したこともあって、企業活動の現場をもっと知りたいという気持ちが強かった。ただし、実際に手を挙げるとなると、いろんなリスクが頭に浮かんでくるわけです。ずっと監査法人をベースに仕事をしようと考えていましたから、3年間も監査から離れて大丈夫かとか、会計士の前に社会人として未熟な自分が、上場企業でやっていけるのかとか。
最後は、“ハイリスク・ハイリターン”に賭けてみようと、締め切りのギリギリになって応募しました。出向している同僚に話を聞こうと思えば聞けたのですが、これだけは自分で決めたいと、あえてそうしなかった。ここまでの人生で、最も迷った、そして最も重大な決断だったと思っています。
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アスクル株式会社経理功刀 紀英
アスクル株式会社経営管理本部 経理 部長
事業拡大に伴って人員が不足し、人材を中途採用しようと考えていた時に、この出向制度を知った。新日本さんに話を聞くと、「エース級を出すから鍛えてほしい」との力強い言葉が返ってきた。それが功刀君を受け入れたきっかけだ。彼の出向の志望動機で印象的だったのは、「IFRSなどに限らずいろいろな業務に携わりたい」という“決意表明”。それは「専門性を生かしつつ、幅広い仕事をしてほしい」という、我々のニーズに合致した。実際、彼には即戦力としてIFRS関連とか開示関連とかにかかわってもらっているが、他の部員と同じように日常業務もこなす。フットワークが軽くコミュニケーション能力も高い彼は、期待以上の働きをしてくれている。
監査法人の仕事は、財務諸表ができ上がった後のプロセスに関するものだ。残りの2年間で、それ以前の作成のプロセスをしっかり身につけて帰ってもらいたいと思っている。監査法人の中に、彼のような「事業会社の思い」を知る人間が増えることは、お互いにとって極めて有意義なことだと確信している。