
監査法人の未来を担うエースたち
有限責任あずさ監査法人
金融統轄事業部マネジャー堤 浩志

監査法人の第一線で「エース」級の成果をあげている会計人を紹介する当連載。第11回に登場するのは、有限責任 あずさ監査法人でマネジャーを務める堤浩志氏だ。「金融を軸に、経済の仕組みを理解したい」という好奇心を原動力に、金融監査の現場を歩んできた。現在は大手日系銀行と外資系投資銀行の会計監査を担当する。
北海道滝川市。札幌と旭川の中間に位置し、初夏には一面の菜の花畑が広がる土地で、堤氏は高校卒業まで過ごした。会計に初めて触れたのは高校時代のこと。進路指導の一環で行われたOB講演に、公認会計士が登壇した。「会計士という職業を〝なんとなく〟認識したのがこの時」と堤氏は振り返る。
「昔から数学が得意で、数字に対する抵抗感もありませんでした。すぐ会計士を目指そうとは思いませんでしたが、親族に銀行員など金融業界の関係者が多かったこともあり、『お金の流れを通じて社会の仕組みを理解したい』という思いで、早稲田大学の商学部に進学しました」
学内に置かれた専門学校のパンフレットを手にしたのを機に、1年次の夏からダブルスクールを開始。簿記にも面白さを感じた。貸借がピタリと一致するのを見て『なんてよくできた仕組みだ。これを考えた人は天才だ』と感動したという。
学習は順調に進み、3年次に公認会計士試験に合格、2018年、あずさ監査法人に入所した。キャリアのスタート時、堤氏が目指していたものを尋ねた。
「資格はとりましたが、会計士である以前に一人のビジネスパーソンとして優秀だと認められる存在になりたい気持ちのほうが強かったと思います。特定の業務やセクターだけに〝尖った〟キャリアは、あまりイメージしていませんでした。会計士という専門性は持ちつつ様々な能力もバランスよく伸ばし、〝何でもできるビジネスパーソン〟になりたい。その思いは今も変わっていません」
堤氏は、入所時から一貫して金融統轄事業部に身を置いている。数ある監査法人のなかで〝あずさ〟を選んだ理由も、金融にある。銀行、証券、保険など金融セクターにおけるクライアントをバランスよく網羅していること、また各セクターを担当するチーム間の垣根が低いことに魅力を感じたのだと言う。
「特定のクライアントに習熟することを大切にする考え方もあると思います。しかし、あずさでは、幅広いクライアントを経験させてもらえる。監査の応用力を鍛えられる。そんな印象があります」
とはいえ、初めての監査業務には戸惑いもあった。
「極端な例を挙げると、開示書類の文字が1ミリでもズレていないか定規で測るような仕事の仕方に触れた時、『これは何のためにやっているんだろう?』と疑問に思いました。監査特有の細かい作業に、当時の私は意味を見いだせなかったのです」
一つの転機は1年目の後半に訪れた。証券会社の監査チームに配属されていた堤氏は、新人ながら子会社のインチャージを任される。
「プランニングから報告書を出すまでの一連の業務を経験させてもらいました。非常にありがたいアサインだったと思います。ただ、監査報告書日の前にパートナーや審査員に説明する場で全然うまく話せなくて……。当時のマネジャーからけっこう厳しい指導を受け、プロとして入念に準備することの大切さを痛感しました」
とはいえ、実務を重ねるなかで監査業務の〝面白さ〟も見いだしていく。
「監査人にできることは、質問、確認、分析的手続きなど限られています。その限られた手法で、無数の取引からつくられた財務諸表の正確性を担保するのは、非常に難しい。財務諸表のどの科目をどの水準で見るのか、チームの限られたリソースをどう投入するのか等を、戦略的に考える必要があります。そのプロセスがクリエイティブで面白いと感じるようになりました」
パートナーを前にして説明する場でも、彼への評価が変わった。論点を先回りして整理し、結論から端的に伝える。3年目を迎える頃には話に淀みがなくなり、質問されることが少なくなった。「説明がうまくなったね」。そんな上司の一言が自信につながっていく。
また、当初は疑問を抱いた〝細かすぎる作業〟への見方も変わっていった。
「私たちは多くの規制があるなかで仕事をしています。ルールを守れなければ、具体的な経済的損失をクライアントに与えかねません。本質的な信頼性を確保するためには、地味で細かい作業も必要なのだと、理解できるようになりました」
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