会計業界の起業人
株式会社オービックビジネスコンサルタント
代表取締役社長和田 成史
中堅・中小企業から圧倒的な支持を受け、顧客数は全国で55万社超。基幹業務パッケージソフト『奉行シリーズ』を世に送り出したのが、オービックビジネスコンサルタント(OBC)である。以来、同社は急成長を続け、1999年に株式を公開。理念経営による「顧客満足度の追求」が同社最大の強み。会計や労務などの知識を有する300人もの開発者が中心となり、顧客満足度ナンバーワンの座を支えている。
「数字を見ながら、収益を予測し、事業の問題点や課題を抽出。安定経営のために何が有効かをかぎわける嗅覚は、会計士としての知識や経験があればこそ。監査法人や会計事務所の先生方とやり方は違えども、事業を適正に推進するという存在意義は同じ。社会貢献につながっていると信じています」
そんな和田氏が公認会計士試験の受験を決めたのは大学3年の時だった。
「実家は貸しビル業を営んでいたんですが、家業は兄が継ぐことに決まっていましたから、私は自分で就職先を探す必要があった。けれど、当時は第一次オイルショック後の就職難。どうしようかと悩んでいたら、兄が『会計士の資格でも取ったらどうだ』と」
将来像を明確に描いていたわけではなかった。しかし、事業を営む家に生まれた和田氏にとって、会計や経理という言葉は幼い頃からなじみがあった。二次試験合格は大学卒業後の76年。同時に、自身が学んだ専門学校から声がかかり、講師として教壇に立つことに。
「すると間もなくして、会計事務所を開いた先輩が監査の仕事を手伝ってくれと。さらには、父の知り合いの部品メーカーからコンサルティングを頼まれましてね。これは、自分に与えられたチャンスだと思いました」
23歳にして偶然にも、三足のわらじ生活に入った和田氏は、超多忙な毎日を過ごす。当然ながら、いずれの仕事相手も年長者で、それぞれが抱える問題に真剣に向かう人ばかり。少しの手抜きも許されないハードな日々が、OBC起業のきっかけに、創業資金や創業メンバーの獲得につながっていく。
「部品メーカーで、オフコンによる生産管理システムの構築を提案したのですが、1000万円以上の費用がかかると言われましてね。何とか安くできる方法をと模索していると、家の隣に住んでいた東大の先生が、『和田君、これからはパソコンの時代だよ。パソコンが世の中を変える』とおっしゃる。『それだ!』とひらめいた私は、すぐにパソコン用の会計ソフトをつくるための行動を開始しました」
時は80年12月。28歳で第三次試験に合格した和田氏は、オービックビジネスコンサルタント(OBC)を設立。専門学校の教え子5人を採用し、会社経営に乗り出した。
「安価な会計ソフトを出せば、自分たちの仕事にも役立つし、お客さまからも喜んでいただける。なぜか失敗する不安や恐怖はなかったですね。リスクがあるのは、それだけ夢が大きいということ。それを追いかけ、チャレンジしていく楽しみのほうが大きかった」
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株式会社オービックビジネスコンサルタント代表取締役社長和田 成史
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