
The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社エータイ
取締役田中 佑治
株式会社エータイは、全国100以上の寺院と提携し、永代供養墓の企画・建立・運営・販売代行を行う。少子高齢化を背景に永代供養墓のシェアは着実に拡大、2025年6月には東証グロースへの上場も果たした。CFOとして同社を支えているのが田中佑治氏だ。大手監査法人で監査業務に従事したのち〝経営者の隣で数字を見る〟経験を積むためにエータイへ。現在は、創業者から事業を引き継いだ2代目社長と新しい会社づくりに挑んでいる。
高校時代はアルバイトと音楽活動に明け暮れた。その反動か、推薦で進んだ大学入学後は周囲と自分を見比べて「資格を取らなければ」と焦りを覚えた。選んだのが公認会計士の道だ。そんな経緯で始めた勉強だが、気づけば会計の世界に惹かれていた。
「会計士という仕事は自分に合っていると思ったんです。泥臭く、当たり前のことを当たり前に、黙々と積み重ねることが、性に合っていました。おかげで、一度試験に落ち、就職活動に切り替えるか悩んだ時も、諦めず勉強を続けることができました」
大学を卒業したその年に合格を果たし、就職したのは有限責任あずさ監査法人。「あずさ以外は行く気がしなかった」「面接もあずさ一本」というから、少々変わっている。
「各監査法人のOB訪問をするたびに必ずその法人の〝悪いところ〟を聞くようにしていました。普通はいいところしか話してくれませんが、あずさのOBだけは悪い点もこっそり教えてくれたんです。信頼できると思いました」
あずさ入所後の田中氏は、小売業やメーカーの会計監査のほか、IPOを控えたベンチャー企業の監査などを担当した。なかでも印象に残るのは、自身が現場責任者として担当したIT企業のIPO案件だという。規模の小さな企業が急成長を遂げ、上場を果たすまでを一から伴走した。
「あの時は本当に忙しかった。でも当時の先輩がこんな話をしてくれたんです。『逃げられるなら逃げたい。でも逃げられないと思った瞬間から、いかに楽しく仕事をするかを考えることが一番大事』と。これを聞いて、仕事への向き合い方が変わった気がします。困難に見舞われるたびにワクワクする、困難が大きいほど人生は豊かになると思えるようになりました」
幸い、監査の仕事自体は楽しかった。先輩後輩にも恵まれ、まさか辞めることになるとは思っていなかったという。退所のきっかけは働き方改革だ。残業が減り、それまでなりふり構わず働いていた田中氏が、ふと「このままでいいのか」と立ち止まった。
「その時、自分に圧倒的に足りないものに気がついたんです。監査法人では経営者とやり取りをする機会が多かったはずなのに、経営者目線で事業を見ることができていなかった。私が尊敬する上司は、経営者から〝もう一言〟を引き出す深い対話ができていたのに。ショックでした。このまま監査法人にいても変わらない、いっそのこと事業会社に転職して経営者の隣で仕事をすればキャッチアップできるんじゃないか――そう考えました」
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株式会社エータイ取締役田中 佑治
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