熱き会計人の転機
テクネ監査法人
代表パートナー 公認会計士前田 昌太朗
公認会計士を志したきっかけを教えてください。
前田就活当時、就職氷河期世代のど真ん中。私よりはるかに優秀な同級生たちが、就職に苦戦していました。一方で、サイバーエージェントやインテリジェンスなどのベンチャーが台頭し、若者を大量に採用していた時代でもあります。またこの頃、公認会計士の資格を持った人たちがベンチャーを支える仕事をしていることも知りました。自分も公認会計士になり、そんなベンチャーを増やすことができれば、自分たちのような若い世代が置かれた負の状況を打破できるのではないか――そう考えて新卒で就職したIT系企業を退職し、公認会計士試験の勉強を始めました。
公認会計士資格を取得後、トーマツに入所されました。
前田入所先はあえてトーマツの静岡を選択しました。トーマツのなかでもユニークな部門で、監査のみならず、あらゆるプロフェッショナルサービスをワンストップで提供することを使命としていた部署です。そこで5年半を過ごした後、より多くのスタートアップ・ベンチャーにかかわる業務に携わりたくて、東京でIPO支援を。並行して、トーマツベンチャーサポートというトーマツ独自のスタートアップ・ベンチャー支援の取り組みにも参画しました。
「ベンチャーを増やしたい」という自分の念願は、ある程度叶えられる環境でした。当時は「ベンチャーはブーム、すぐ終わるよ」と揶揄されたものですが、私たちは“ブーム”ではなく、“カルチャー”を醸成したかった。そのために、大企業も金融機関もメディアも官公庁も全部巻き込んで、ベンチャー支援のエコシステムをつくっていく仕事に注力し続けました。
その後、農業系ベンチャーであるアグリメディアに転職したのは、なぜでしょう?
前田トーマツベンチャーサポートでは一定の目標達成ができたため、次はベンチャーの当事者になりたいと考えたのです。アグリメディアはトーマツ時代から接点があった会社です。使われていない農地をサポート付きで貸し出す「シェア畑」というビジネスモデルに面白さを感じました。起業文化が確立されたことで、若い人が起業に挑戦するハードルは低くなったかもしれません。一方で、貧困問題などで挑戦のスタートラインにすら立てない人もいる。ならば必要なのは挑戦のスタートラインに立てる環境づくりで、農業にはその可能性が大いにありそうだと考えたのです。
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テクネ監査法人代表パートナー 公認会計士前田 昌太朗
テクネ監査法人
私もトーマツ出身です。在所当時は業務をともにする機会がなかったのですが、監査もしながらベンチャーのサポートもしている前田は、フロアでも目立つ存在で、自宅が近所だったこともあり、個人的な付き合いが続いていました。
前田から監査法人設立の話を持ちかけられたのは、私がトーマツを退所して独立した頃。前田の熱い思いに賛同し、参画を決めました。改めて彼の仕事ぶりを見ると、大きな武器になっているのは優れた“ビジネス感覚”だと思います。それは、監査の仕事しかしてこなかった公認会計士にはなかなか持ち得ないもの。おそらく前田は、トーマツ時代にあまたのベンチャーを支援するなかで、その力を身につけていったのでしょう。ビジネス感覚に根ざした鋭いコメントは、私たちが支援しているベンチャーにも刺さっていると思います。