創業まもなくピボットを決断

公認会計士を志したのはいつ頃ですか？

大学２年次です。高校時代から何となく「いつか自分で事業をつくって経営者に」と決めていました。会計士になれば多くの会社を見ることができますし、基礎的なビジネススキルも身につく。起業する時の武器になると思いました。

大学卒業後はトーマツに入所されました。どんな業務を？

最初の３年は、トータルサービス部に所属し、スタートアップのＩＰＯ支援、監査、内部統制の構築などに従事。大手ＩＴ系上場企業の会計監査なども経験しました。その後、海外勤務を希望し、シアトルに２年駐在しています。ただ、ある程度経験を積んだら起業するために辞めるつもりでした。仕事に面白さを感じられたのは５年目ぐらいまで。それ以降はルーティン業務も多くなり、自己成長実感が持てなくなりました。会計や税務の専門家になるより、幅広くビジネスの経験を積みたいと考え、退所を決めました。

起業のために何か準備をされていたのですか？

国内外のビジネストレンドをチェックしていたぐらいです。ただ、今事業をしていて実感しているのは、トレンドを追いかけても意味がないということ。トレンドとは、すでに手がけている人が複数いる、というものですよね。トレンドを追う側ではなく、トレンドをつくる側にならないと収益性の高い事業はつくれないと思います。

その後、コンサル会社を経て17年に起業されました。

経営側の経験を積むためにコンサル会社に転職したのですが、やはり自分で事業をしたくなり当社を創業しました。最初に事業化したのはホテルや民泊など宿泊施設の検索比較サービスです。すでに海外では大きな資金を調達していたサービスの例があり、その波が日本にも来ると予想しました。要はトレンドを読んだのですが、結果的にこの事業はスケールしませんでした。投資家から資金を集められたから、成功確率が高いビジネスというわけではない。さらに新型コロナの感染拡大を受けて、旅行関連のサービスは軒並みストップ。ビジネスモデルの転換を余儀なくされました。

振り返ると、これまでの人生では努力量に比例してけっこうすぐに結果を出せるタイプでした。起業も順調にいくと思っていたのですが（笑）。ビジネスの難しさを実感しました。