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Accountant's magazine vol.37

-アカウンタンツマガジン-
2016年08月01日発行

会計士の肖像

「我々の行動指針は「Public Interestへの奉仕」。プロフェッションとして、守るべき価値観である」

日本公認会計士協会
相談役藤沼 亜起

会計士の肖像

「プロの職業人になる」。そう決めて選択した会計士への道

日本を代表する公認会計士、藤沼亜起(ふじぬま・つぐおき)は、早くから国際畑中心に活動し、その地歩を築いてきた。2000年、日本人として初めてIFAC(国際会計士連盟)の会長に選任され、その後は、日本公認会計士協会会長に就任。いずれにおいても、組織やガバナンス改革に積極的に取り組み、藤沼のエネルギーは、一貫して、会計にかかわる国際的なインフラ整備に注がれてきた。歴任した要職の多くは推されてのことだが、それは、藤沼のフランクな人柄と本質を突く言動が周囲を惹きつけ、期待を集めるからだ。その一つひとつに応えてきた藤沼は、まさしく正統派のリーダーである。

私はスロースターターで、人生の後半になればなるほど、スピードが増していったんですよ。子供の頃は落ちこぼれだったから(笑)、そんな私を知る同窓生たちにすれば、会計士協会の会長になったとか、昨年、春の叙勲を受章したとか、そういう話になると「えっ!藤沼が?」という感じで。

ただ性格上、友人は多かったし、学生時代は一貫して先生からも好かれたというか、可愛がってもらいました。私は末っ子なんですけど、末っ子って調子のいいヤツが多いでしょう(笑)。それがよかったのかもしれない。高校時代の担任には、よく山登りに連れて行ってもらったし、最近では、中学時代の英語の先生が、終活のつもりなのか……海外で買い集めてきた品を、私にドカドカ送ってくる(笑)。そんな具合に、今でも気にかけてもらえているのは、うれしいことです。

「何かプロフェッショナルな道に」と意識するようになったのは、中学生の頃でしょうか。というのも、私の地元である杉並区は、わりに教育熱心なところで、成績優秀な人たちは、進学校として有名な都立西高校から東大へ、というコースを目指すわけです。でも、私には到底望めないコースだったから、ならばプロの職業人を目指そうと。弁護士という考えもありましたが、「会計士がいいんじゃないか」、兄がそう言ったのです。当時としては新しい職業でしたし、興味を持った私は、ここから会計士になろうと決めたのです。

公認会計士試験の合格者を多く輩出する中央大学を選んだのは“当然”の流れ。藤沼は商学部に入学し、そして、とりわけ難関だった井上達雄教授のゼミ試験にも合格し、順調に歩を進める。しかしながら、会計士試験に向けて本気でエンジンをかけたのは4年生になってからで、それまでは藤沼らしく、青春を謳歌していた。

商学部が運営する「商学会」というクラブに入って、仲間と熱心にやっていたのは、ほかの大学と付き合うこと。いろんな大学と連携して、例えば経営学や会計学など、テーマを決めて、学会のミニ版みたいな感じで発表し合う場を設けるとか、いろんな企画を立てて活動するんです。まぁ主たるものは遊びでしたが。この頃人気のあったダンスパーティーも、よく企画したものです。パーティー券をデザインし、いくらで売るとか、バンドはどうするとか、ちゃんと収支計算もしながらね。

井上ゼミって名門で、ゼミ生の7、8割以上が会計士試験に合格していたんです。当然、ここに入ってくる学生は受験に燃えているから、商学会の活動に勤しむ私たち仲間とは、あまりソリが合わないわけです。「お前たちは真面目じゃない。もっと受験勉強に取り組めよ」って、よく言われたんだけど、「いやー、人生は長いから」なんて調子のいい言葉を返したものです。でも井上先生は、受験に向けてばかりでなく、広くほかの大学と交流することに関して、「大事なことだ」と評価してくださった。先生は正統派の研究者でありながら事務所も経営する、大学教授としては珍しく実業を知る方だったので、私たちのような連中を面白がってくれたのかもしれません。

4年にもなると、さすがに本気で勉強しなければと。それまで強気なことを言っていただけに、会計士試験に合格できなかったらみっともないし。だから集中して、必死に勉強しましたよ。合格したのは大学を卒業した年ですが、その間は、東京会計学院で専任講師を務めながらで、これもいい勉強になった。人に教える、つまり授業をしたり、そのための資料をつくったりするのは、自分に翻ってきますから。人生で一番勉強した時期ですね。

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Profile

日本公認会計士協会 相談役 藤沼 亜起

日本公認会計士協会相談役藤沼 亜起

1944年11月21日
東京都杉並区生まれ
1968年3月
中央大学商学部卒業
1968年11月
公認会計士第二次試験合格
1969年4月
堀江・森田共同監査事務所入所
1970年6月
アーサーヤング公認会計士共同事務所入所
1974年11月
公認会計士登録
1986年5月
監査法人朝日新和会計社代表社員
1993年7月
太田昭和監査法人(現新日本有限責任監査法人)代表社員
2000年5月
国際会計士連盟(IFAC)会長
2004年7月
日本公認会計士協会会長
2008年4月
中央大学大学院ビジネススクール特任教授
2010年4月
IFRS財団トラスティー評議員会副議長
2015年5月
旭日中綬章受章
2015年7月
日本公認会計士協会「公認会計士の日」大賞受賞

[業界活動など]
現在、日本公認会計士協会相談役、財務会計基準機構評議員ほか、上場会社の社外取締役及び監査役多数

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