The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社キューブ
取締役CFO小澤 拓
「誰かにぶら下がった人生は嫌だ」。小澤拓氏が公認会計士を目指した裏には、「自分の手で稼ぎたい」という強い思いがあった。監査法人からコンサルティング会社、そしてベンチャー企業のCFOへ。徐々にビジネスそのものとの間合いを詰めた小澤氏は、今、“ぶら下がる”のではなく“支える”ことに無類のやりがいを覚えている。
横浜市内の進学校に入学したものの、勉強に興味を失った小澤氏は、「高3の夏頃まで、なんとなく美容師になりたいと思っていた」という。その気持ちに変化が生じたのは、大手電機メーカーに勤務していた父親が、突然「早期退職して、新しい仕事をする」と宣言したのがきっかけだった。
「みんな『えっ』という感じで、僕は下に2人いる弟たちの模範にならないと、と勝手に状況を背負い込んだんですね。やはり大学に行く、行くからにはその高校の進学先で最高難易度レベルを目指す、と決めた。実は当時、成績は学年で下から4、5番目(笑)。そこから、どうせやるなら全員追い抜いてやろうと考えたわけです」
ターゲットに定めたのは、早稲田の法学部。その先には、何かチャレンジしがいがあるものをと思い「日本で一番難しい資格である弁護士になる」という青写真も固まっていた。
半年後、見事現役合格できたのは、決して運のなせる業ではなかっただろう。だが、努力して入ったはずの大学にも、早々と幻滅を覚えてしまう。
「教科書の棒読みで、授業が面白くないわけです。これは僕の進むべき道ではないな、と。バイト三昧の生活で、結局2年生の時点で留年が決まる体たらくでした。でも、3年生の終わりぐらいになると、周囲が就活でざわついてきますよね。それを見て、このままだと、大学は何もしないまま終わるなと、さすがに焦りを感じて」
将来に目を向けた時に頭をよぎったのが、父親の姿だった。
「辞めさせられたわけではありませんが、安定しているはずの組織にいても、誰かに使われる立場だと、何が起こるかわからない。僕は、将来自分で商売ができるようになりたい。今はそのために必要なスキルを身につけることが大事ではないのか、と考えたのです」
そうした思考の結果たどり着いたのが、公認会計士という資格だった。
「若いうちから経営者に接するチャンスがあるというところにも、大いに魅力を感じたんですよ。将来、起業するうえで、そういう人たちから学べることは少なくないはずだ、と」
目標さえ定まれば、集中して頭脳を働かせることができるタイプなのだろう。「簿記という言葉も知らなかった」状態から専門学校に通い始め、1年半後の2007年、公認会計士試験に“一発合格”を果たした。
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