
The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社フライヤー
取締役CFO望月 剛

名著を1冊10分で読める本の要約サービス「flier」や、人材育成サービスを提供する株式会社フライヤーのCFO・望月剛氏は、現PwC Japan有限責任監査法人出身。経営コンサルティング会社ほか複数の事業会社で徹底的にビジネスを学んだのち、同社に参画。コロナ禍での資金難も乗り越え、2025年2月のIPOを牽引した。上場後はIRとM&Aで第2、第3の事業成長の柱づくりに挑む。
数字が好きで、大学は経済学部に進学。「公認会計士は、将来の活躍の場が広いはず」と資格勉強を始めた。
「解像度高く会計士について理解していたわけではなかったんです。でも〝自分の可能性を限定しない〟ですむ資格という印象がありました。勉強を進めるうちに、会社を成長させたり、事業再生したりする仕事は格好いい、という思いも芽生えてきました。そんな感覚でしたから、監査法人で長く働くイメージはなかったです」
試験合格後に入所したのは、中央青山監査法人だ。グローバル企業を対象とする部署に配属されたが、間もなくカネボウの粉飾決算に端を発する組織再編の荒波に巻き込まれ、部署ごと当時のあらた監査法人に移籍。以降は外資系企業を中心に会計監査を担当した。
当時を「楽しい思い出のほうが多い」と振り返る望月氏。毎週異なる企業を訪問し、違う人たちと働くのは刺激的で好奇心が満たされたという。一方、監査という仕事の限界も感じた。財務諸表のチェックにとどまり、その先にあるビジネス上の意思決定に深く関与できない。ビジネス自体を動かしたい、ビジネスをもっと深く知りたい、という気持ちに駆られた。転じた先が、戦略コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーだ。
「監査法人からいきなり事業会社にいっても、経理に配属され、ビジネスにかかわれないかもしれない。それなら経営コンサルをはさんでから事業会社へ、という順番がいいと考えました」
ベインでは事業再生、中期経営計画策定、M&A支援と幅広い仕事を経験。顧客サイドの現場のベテランに反発され、若手の〝よそ者〟扱いされる苦い経験もした。学んだのは、人を動かすには腹を割って話す。酒席も含めて〝仲良くなる〟努力をすること。愚直だが、それが信頼を得る近道だと知った。
「『ビジネスを学びたい』という期待どおりの経験は積めたと思っています。監査の仕事は一つのフレームにあてはめていく作業が多いですが、コンサル会社ではフレームを一から組み立てるところから始める。確かに、ビジネスにおいて『どうやって売上をつくる?』と考える時に既存のルールを当てはめる発想は通用しません。慣れるまで時間がかかりましたが、自分の頭で考える力が培われたと思います」
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株式会社フライヤー取締役CFO望月 剛
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