公認会計士「研修出向制度」体験者リポート
日本ガイシ株式会社
財務部 主計グループ主任猪口 英雄
監査法人には約7年いらっしゃったのですね。
猪口監査法人に入所する前、公認会計士の仕事は、経理や財務に不慣れな方々の相談に乗り、指導することで、感謝されるものだと思い込んでいました。しかし、主に担当したクライアントが銀行や証券会社といった金融業だったこともあるのですが、経理の体制はきちんとされていて、相談も彼らなりの結論が既に出ている案件を確認するようなものばかり。逆に、ある経理処理について質問したら、「それ三度目ですよ」とうとまれたり。つまり、先輩たちも同じことを聞いていたんですね(笑)。当初は、理想と現実の違いに大きな戸惑いがありました。
ただし、企業決算は監査を経て世の中に公表され、そのことによってお金の流れを生み出しているわけですから、社会的な意義と責任の重い仕事だという自覚は、常にありました。それがあったから、7年間続けてこられたのだと思います。
出向には、自ら手を挙げたとか。
猪口昨年の3月頃、事務所の掲示板に、出向者募集の案内が出ました。内容を確認すると、出向先は名だたる企業ばかりですし、出向中の処遇も充実していました。これは応募しない手はないと、家族の了解を得たあと、すぐに申し込みました。福岡事務所からの応募で、愛知県への転居をともなう出向でしたが、無事に着任することができました。
仕事にやりがいは感じていましたが、毎年ルーチンの業務という現実に、マンネリを覚え始めていました。また、クライアントが金融機関に偏っているというのも、専門性は深まりますが職域の広がりに欠けるという、危機感がありました。だから、私にとってはまさに渡りに舟のお話だったのです。
この記事の続きを閲覧するには、ご登録 [無料] が必要です。
日本ガイシ株式会社財務部 主計グループ主任猪口 英雄
日本ガイシ株式会社取締役 常務執行役員 財務部長
当社は、2年前からIFRS導入の専属チームを設け、取り組みを進めてきた。ただ、具体化するには専門性が足りないという認識は当初からあった。公認会計士か、それに匹敵する知識を持つ人材を採れないかと考えていた時、日本CFO協会からこの出向制度のご紹介をいただいた。猪口君に腰を据えて取り組んでもらったことで、IFRS導入に専門知識を取り入れられるようになった。のみならず、プロパー社員の海外勤務ローテーションが組みやすくなるなど、多くのメリットが生まれている。ちなみにこの7月には、この制度を利用して2人目を採用した。
監査法人にとっても得るものの大きい制度だと思う。今後、国内のクライアントが増えることは、あまり期待できない。だとすれば、監査法人も市場を海外に求めざるを得まい。グローバルに展開する企業活動を経験した会計士の存在は、大きな武器となるはずだ。