The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
ジグソー株式会社
取締役CFO 経営管理ユニットユニット長鈴木 博道
苦労せず大学進学が可能な環境に、甘えた自分―ー。鈴木博道氏が公認会計士試験に挑んだのは、「そんな自らを変えたい」という思いもあってのことだった。監査法人ではベンチャー企業のIPOなどを担当し、やがて“支援していた側”に転身する。IT企業ジグソーのCFOとして、この4月には念願の上場を実現。しかし、そこにまだ、“達成感”はない。
1983年、千葉県流山市に生まれた鈴木氏は、小学校高学年から中学までを、父親の転勤先であるシンガポールで過ごす。
「通ったのは日本人学校ですが、現地にはいろんな国々の人がいました。中華系の人間は、自分の主張をどんどん口にするんですね。そういう環境は、僕にはいい勉強になりました。今でも、ディベートは得意ではないけれど、嫌いではありません」
中学卒業後は、単身帰国して、慶応義塾高校に入学する。そこには、自由な校風が漲り、エスカレーター式に大学進学が可能という環境が整っていた。
「はっきりいって、勉強は怠けました。授業中にマンガを読んでるような(笑)、ダメ高校生でしたよ」
そんな折、同級生から、後の人生に微妙な影響を及ぼす言葉をかけられる。
「たぶん彼はもう覚えてないでしょうけど、並んで歩いていたら、『公認会計士って知ってるか?弁護士と同じくらい稼げるらしいぞ』と、ポツリと言うんですよ。公認会計士という単語を耳にするのは初めてだったので、妙に印象に残りました」
とはいえ、速攻“勉強モード”になったわけではない。慶応義塾大学経済学部に進んだ後も、サークル活動メインの毎日。ところが、ある日、学生生協を歩いていると、偶然、公認会計士試験のパンフレットが目に留まる。
「あ、これがあいつの言ってた資格か、と。大学1年も終わり頃になると、さすがに焦りも覚えていたんですよ。受験して入ってきた学生は、ちゃんと勉強しているのに、これでいいのだろうかって。で、今まで怠けたぶん、頑張って資格を取ってやろうと思い立ったわけです。数学は好きだったから、何となく会計士は向いているのではないか、という考えもありました」
かくして、大学2年から専門学校に通い始める。
「4年生の時点で合格することを目標に、2年のコースを選びました。1年目はペースもけっこうゆっくりで、『なんだ、楽勝じゃないか』と。ところが、2年目に入ったとたん、質も量も“パワーアップ”したんですね、突然(笑)。なので、バイトもサークルも全部スッパリ切り捨てて、専門学校一本の生活に切り換えました。同級生は就活の話を始めているし、『失敗したらえらいことになる』と、それはもう必死でした」
猛勉強は功を奏し、計画通り2006年に“一発合格”を果たす。入所したのは、監査法人トーマツだった。
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ジグソー株式会社取締役CFO 経営管理ユニットユニット長鈴木 博道