会計業界の起業人
古田圡公認会計士・税理士事務所
代表古田圡 満
テレビや雑誌から多くの取材が押し寄せる。注目されるのは、会計事務所らしからぬ3つの文化だ。
朝8時、広い事務所に明るく元気な声が飛び交う――所員は互いに相手の名前を呼び合いながら「挨拶」を交わす。そして8時20分。140人の所員は、ほうきと塵取りを手に事務所前から最寄り駅までの道を「掃除」する。所員が事務所に戻ってくると、噂に聞いていたユニークな「朝礼」が始まった。業務における情報の共有と伝達。「本気じゃんけん」「ハッピー体操」で体を動かし、笑顔をつくると清々しい気分で仕事に向かう。
「私たちのビジョンは、日本中の中小企業を元気にすること。日本で一番お客さまから喜ばれる数が多い、会計事務所になることです」
こう語る古田圡氏の机は、事務所の入り口、真正面にある。
「大切なお客さまを真っ先にお迎えできますから。しかも、所員は私の前を通らないと出入りできません(笑)」
型破りな文化を浸透させてきたのは、職場を単なる仕事の場にしたくなかったから、だという。
「昔は家が人間を育てる場でした。でも、今はそれができていない。お客さまから常に喜ばれる人になるために、所員の人間性を高めることを事務所経営の主眼にしています」
新入社員は初めての給料をもらうと、両親に感謝の気持ちを伝えに行くことが義務づけられている。実家までの交通費は事務所が負担。お礼の口上は先輩からアドバイスをもらい、練習し、本番に備える。
「若い社員に、人から感謝される喜び、感謝することの大切さを知ってほしいのです」という古田圡氏自身、感謝の気持ちを忘れない。給料もボーナスも自ら所員の席に出向いて現金で手渡し。目指すは、「所員みんなとその家族が幸せになる会社づくり」と断言する。
「つまり、会社はすべて社員のもの。幸せを求めて働く労働の対価を人件費と考えれば、人件費が増えることは経営者にとって最高にうれしいことなんです。だから、うちではP/LもB/Sも私の報酬もすべてオープンにしています。昨年度の年商は10億4800万円、総資産が10億円で自己資本比率は90%。現預金もしっかり置いてありますから、所員が不安に思うことはまずありません」
クライアントに対しても一方的に助言や指導を行うのではなく、自ら実践して見せる率先垂範を大切にしている。自分たちが作った分厚い経営計画書や月次決算書はクライアントにも公開。そんな独自のサービスは徐々に口コミで広がり、営業活動は一切なしで顧客数は年100件以上ずつ増加。何と昨年は200件の増客があった。
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古田圡公認会計士・税理士事務所代表古田圡 満