The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社トリプルアイズ
取締役CFO加藤 慶
株式会社トリプルアイズは、2014年から囲碁AIの研究に取り組んできた。そこから生まれた画像認識プラットフォーム「AIZE」とシステムインテグレーション事業を柱に成長を遂げる。現在、同社のCFOを務めるのは大手監査法人出身の加藤慶氏。上場審査中に創業者が急逝するという苦難を乗り越え、同社を上場に導いた。
公認会計士を目指したのは社会人になってからのこと。就活中「難しいことがしたい、チャレンジがしたい」と思い立ち、会社経営に興味が湧いた。経営を学ぶため新卒で入社したのは、中小企業を対象にFCビジネスを支援するベンチャー・リンク(当時)で、昼夜問わず業務に従事。事業計画を策定する業務のなかで、〝会計の面白さ〟に触れたのだという。「楽しいし、自分にもできそう」と直観した。
「単純な動機ですが、経営を会計の側面から学びたくなり、06年に退職して受験勉強に専念することに。『公認会計士試験は3000時間勉強すれば受かる』と聞いたので、バッファを持たせて4000時間やる計画を組んで本気で実行しました」
晴れて資格を取得した加藤氏は、現EY新日本有限責任監査法人に入所。それから丸10年、在籍することになる。
「普通の会計士とちょっと違う」のは、大手企業の監査を経験していないこと。ベンチャー・リンク時代と同じく「中小企業やベンチャーを相手に仕事がしたい」と希望を出すと、IPOの専門部隊に配属された。
「退所までに約200社に関与しました。とりわけショートレビューから上場申請まで関与できた会社は、思い出深いですね。10年間で学べたのは〝やり抜く〟大切さ。IPOの仕事は忙しさに波があり業務が極端に集中することも。そのなかでも努力を怠らず、支援し尽くすということです」
当時在籍していた部門では、担当した上場準備企業に声をかけられてCFOになる会計士が少なからずいたという。加藤氏も同様だ。次の目標はCFOになって企業を上場に導くこと。EYを退所して以降、かつてのクライアントに声をかけられるかたちで複数のベンチャーを渡り歩くことになる。
18年1月には、新電力ベンチャーのパネイルに経理マネジャーとして入社。18年4月にはITベンチャーのMAYAホールディングスの取締役CFOに。東工大発技術ベンチャーの取締役も経験している。現在も、デジタル学習教材を開発する、すららネットの社外取締役、スマートロックなど不動産管理向けサービスを開発するライナフの社外監査役を兼務している。
「振り返ってみると、私は普通の転職活動をしたことがありません。現職のトリプルアイズも含めて、どの転職も人とのつながりが縁でした。特別なことをしているつもりはないのですが、過去一緒に働いたことのある人とは連絡を取り合い、関係を維持するよう努めています。時折『この会社のこのポジションは加藤にぴったりじゃないか』などと声をかけてもらえるのは、そのためだと思います」
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株式会社トリプルアイズ取締役CFO加藤 慶