- vol.75
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「変革の時代だからこそ、監査人としての気概、泥臭さみたいなものは、改めて重要だと思う」
公認会計士浜田康事務所
浜田 康
会計士の肖像
PwC Japanグループ グループマネージングパートナー
PwCコンサルティング合同会社
代表執行役会長鹿島 章
いわゆる先生然としたスタイルをよしとせず、鹿島章が一貫して大切にしてきたのは、徹底した顧客志向。士業の枠に捉われず、「お客さまのためにどこまでできるか」を最大のモチベーションに、幅広く、実利ある仕事を追求してきた。大阪で生まれ育ち、公認会計士としてスタートを切った鹿島のベースには“大阪人気質”もあるが、顧客と共に成果を分かち合う喜びを重ねることで、その流儀は、より色濃いものになった。国内最大級のプロフェッショナル・サービス・ファーム、PwCJapanグループのグループマネージングパートナーに就き、大部隊の舵取り役を担う現在も、根っこにある信条は変わらない。顧客にどれだけのインパクトを与えられるか――「プロフェッショナル・サービスも総合力の時代である」と、鹿島は明言する。
育った枚方市は、当時まだ田舎で、けっこう自然が残っていたんですよ。そのエリア内で十分に遊べたし、サッカーのスポーツ少年団に入ったり、そろばん教室に通ったり、まぁ好きに伸び伸びとやっていました。特段、何か自慢できるような話はないんですけど、そろばんに関しては向いていたようで、小学校5年の時には珠算1級を取り、中学生になってからは、地域の競技大会で入賞したりしていました。だから、算数は得意でしたね。といっても、四則演算までですけど(笑)。
通った高校は、ラグビーを始めスポーツが活発な四條畷高校。進学校でもありますが、校風がかなり自由でね、先生から「勉強しろ」と言われた記憶はないし、受験色も強くなかった。僕は柔道部に入り、皆と同様、あくせくしないで学校生活を楽しんでいたんですけど、2年の時、大病を患いまして……。一般にはあまり知られていない伝染性単核球症という病気で、とにかく高熱が続く。肝機能障害も起こし、結局3カ月にわたる入院生活と自宅療養を余儀なくされました。その後、学校には行き始めたものの、ちょっと風邪をひくと熱が長引いて寝込むという感じで、実は、そんな状態が20代前半の頃まで続いたのです。
加えて、柔道場で遊んでいる時に肩を脱臼してからというもの、それがクセになり、存分にスポーツもできなくなっていました。ケガは繰り返すし、病弱だし……これは大きな試練になりました。僕は鼻っ柱が強いというか、やれば何でもできるくらいに思っていたのに、「これでまともな社会人になれるんだろうか」と、自分への期待を持てなくなったのです。振り返れば、人生のなかで一番大きな出来事だったかもしれません。
大阪大学に進学してからも、冴えない時期が続いた。「将来のために、自分なりに何か工夫をしなくては」と、取り組み始めたのが簿記の勉強である。もとよりそろばんの覚えもあり、鹿島は「わりと簡単に」簿記1級を取得。公認会計士もいけるんじゃないか――そう狙いを定めて資格試験に臨んだ結果、鹿島は一発で合格を果たした。
親父の従兄弟が公認会計士をしていたので、そういう職業があることは遠巻きながらも認識していました。それと、大手電機メーカーに勤めていた親父を見ていて、僕は基本、会社勤めは向いていないだろうと。体調の問題もありますが、それまで誰かの指示を受けるのではなく、自分のペースで人生を歩んできました。大きな組織に入り、規律のなかで仕事をする自分の姿を想像できなかったのです。
まずは簿記からと勉強を始めてみると、調子がよかったので、3年の夏に「俺、真面目に会計士を目指すから遊ぶのはやめる」と友達に宣言。頑張ると決めて、ほぼ毎日、簿記の専門学校に通いました。体のことを考えると詰め込みはできないので、ちゃんと計画を立て、うまくペース配分しながらね。もともとマイペースなので、周囲を気にせず、自分のスタイルで勉強したのが奏功したのか、1回で運良く合格することができた。
その勉強中に、ゼミの先生の紹介で“会計士の仕事”をのぞきに行った先が、当時の新和監査法人でした。この時、のちに僕が師と仰ぐ篠原祥哲先生と出会ったのです。第二次試験のあと就職活動もせずにのんびりしていた僕に、合格発表の日の朝、「おめでとう。今日事務所に来なさい」と電話をくださったのも篠原先生。合格者に対しては、いろんな監査法人から求人連絡が入る時代でしたから、実際、僕のところにもけっこうな数の電話があったのですが、篠原先生があまりにも当然のように「来なさい」と言うから、「はい、わかりました」ですよ(笑)。ちょうど朝日と新和が合併したタイミングで、僕は朝日新和会計社の第一期生としてスタートを切ったのです。
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