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「東急連結グループの多様なビジネスに伴走しながら、最適な経理体制を実現する」
東急ファイナンスアンドアカウンティング株式会社
経理・財務最前線
住友生命保険相互会社経理部
創業100年を超える歴史を持つ住友生命保険相互会社。総勢60人からなる同社の経理部は、5つの室に分かれている。
単体決算や連結決算、帳簿管理などを担う経理室に、税務を統括する税務室。予算配分や収益管理を行う事業費室、全国に約80ある支社と約1400の支部の入出金を管理する支社会計総務室。そして什器備品等の購買や予算管理をする資金購買管理室である。
「日々心がけているのは、5つの室それぞれの専門性を追求しながら連携し、部としての総合力を高めていくことです」と経理部長の寺﨑啓介氏は語る。
経理以外の様々なキャリアを積んだ人材が集結していることも、同部の特徴だ。メンバーは総合職と一般職に分かれており、一般職は伝票や帳簿など日々の経理実務にあたることが多い。一方の総合職は、販売やシステムなど他部門を経て経理部に異動、決算実務や財務諸表のつくり込みを担当する。
「当社の連結総資産は33兆円を超えており、一つひとつの勘定科目の意味づけも多種多様です。例えばソフトウェアを資産に計上するのか、それとも費用とみなすのか、ある程度システムの知見がないと判断が難しいところ。もちろんシステム部門とは日々連携していますが、その分野に詳しい人間が経理部にいればよりスムーズな連携が可能になるのです。同様に、販売に詳しい人材にも、その経験を生かしてもらえる土壌があります。経理と税務の専門性がベースにあるのは当然として、それに加えて他部門での業務経験が大きな武器になる、そんな経理部だといえます」
生命保険という事業の性質から、経理部においても〝堅実で確実〞な業務遂行は大原則だ。「お客さまからお預かりしている保険料に対して責任を果たす。ここが揺らいだら、生命保険会社の本質を失ってしまいます」と寺﨑氏。
一方、住友生命の経営戦略が変化するにつれ、経理部にも新たな役割が生じている。同社は近年、中長期的な成長基盤を求めて海外展開を推し進めてきた。13年にベトナム最大手の保険・金融グループに、14年にはインドネシアの大手銀行の生命保険子会社に出資。16年2月には米国生命保険グループであるシメトラ・フィナンシャル・コーポレーションを買収すると、同年7月には南アフリカのディスカバリー社と提携して健康増進型保険を開発することを発表した。今後も同社のグローバル化は加速する。
経理部として会社の屋台骨を支えるには、経営戦略を理解したうえでこうした動きもキャッチアップしていかなければならない。もとより同社は、創業当時から役員室がオープンドアであることで知られる。新入社員であっても役員に対して直接プレゼンテーションする機会が与えられているのだ。これは若手が自由闊達に力を発揮する風通しのよい社風を示すものだが、社員一人ひとりが会社の経営戦略を理解し、経営感覚を養う助けにもなっている。
加えて今後は連結決算のウェイトが高まり、グローバル化の延長線上には国際会計基準への対応も将来的には想定される。当然ながら英語力は不可欠、国際会計基準に精通した人材を育てることも急務となる。
「そのため従来の堅実性、確実性に加えて、柔軟性やチャレンジ精神も、経理メンバーには求められています」
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経理部長寺﨑 啓介
てらさき・けいすけ/1989年、熊本大学法学部卒業後、住友生命保険相互会社に入社。2007年、スミセイ損害保険株式会社経営管理部長、09年、メディケア生命保険株式会社取締役社長、14年、住友生命沼津支社長などを経て、16年4月、同社経理部長に就任。