熱き会計人の転機
税理士法人Suinas
代表社員 公認会計士 税理士下村 和也
公認会計士を目指したきっかけを教えてください。
下村私には聴覚障がいというハンディキャップがあり、読唇術や手話で補いながらコミュニケーションをとっています。このハンデを専門性で補おうと考えたのが大学1年の時。大学生活をかけて取り組める難関資格への挑戦を決め、4年生の年に合格することができました。
新卒で入所したのは、あずさ監査法人です。初めのうちはIT監査と会計監査の両方を見ていました。仕事は、地味で大変でしたが、学ぶことも多くありました。監査法人には、耳が聞こえなくてもできる仕事がたくさんあります。でも、会計士という仕事は、やはり経営者とコミュニケーションをとってなんぼ。1対1のコミュケーションなら問題ないですが、会議など複数人が同時に発話する場では、聞き取るのが難しく、電話応対も同僚に手伝ってもらわなければなりませんでした。
このコミュニケーションの壁をクリアしないと、会計士として高いレベルでは戦えない。長い目で見ると、あずさに長くいすぎるのはよくないのかもと悩むように。そして、英語を使う仕事が多かったこともあり、留学を意識するようになりました。
米国留学での専攻は?
下村ロチェスター工科大学でプログラミングを学びました。音声認識の技術で会議の発言がテキスト化できたり、電話を聞き取れたりできるようになれば、もっと能力を発揮できると期待していたんです。でも、周囲の学生のレベルが高く、ついていけませんでした。卒業後は米国でエンジニアとして働くつもりでいましたが、結局、卒業できないまま帰国することになってしまいました。
帰国後は、地元神戸の税理士事務所に就職しました。米国で夢敗れはしたものの、発見もあったんです。米国はビジネスシーンにおいてもバリアフリーで、障がい者も健常者同様、当たり前に働いていました。たとえ耳が悪くても、聞こえる人と組めば、テクノロジーがなくたって、コミュニケーションの壁をクリアできます。それに日本では障がいを〝減点〞と見る傾向がありますが、米国は実力一つで挽回できる社会でした。
自分はもっとできる。自分らしい働き方を確立したい。いずれ独立して通訳をアシスタントにつけるのもいい。そう考えるようになりました。
転職ではなくて、〝独立〞を考え始めたのですね。
下村はい。例えば、車いすに乗っている人は、スロープやエレベーターを設置することで移動の問題を解決できますよね。環境の整備を勤務先にお願いす るより、自分で稼いでその環境を整えたほうが絶対に早い。自分が「こうあるべきだ」と思うことを自分で解決できるようにするには、独立が最善の選択肢だと思いました。
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税理士法人Suinas代表社員 公認会計士 税理士下村 和也
税理士法人Suinas代表社員 公認会計士 税理士
下村は、あずさ監査法人時代の3つ先輩です。あずさ在籍当時から実力は社内で評判になっていましたよ。私が独立するにあたって彼に声をかけたのは、彼にしかない武器があるから。海外経験があり、手話をまじえて聴覚障がいのあるお客さまにもアドバイスができる。こんなキャラの立っている人間はなかなかいません(笑)。
対面でのコミュニケーションは問題なし。確かに電話は苦手ですが、電話ぐらい私に転送すればいいじゃないですか。会計士としての特徴を見ると、学者肌ですね。会計理論をきちんと勉強し、実務上引っかかるところがあれば人に聞くなり、本で調べるなりして、必ず深掘りする。会計士の専門性を追求する姿勢が際立っています。
当事務所は、海外展開を目指しています。採用においても、下村のように海外に出たい人、そこに人生を賭ける気持ちがある人が来てくれたら嬉しく思います。