公認会計士「研修出向制度」体験者リポート
三井物産株式会社
経理部 会計基準室内橋 孝
監査法人ではどんな部署で仕事をされていたのですか?
内橋入所前は、IPOのサポートや、ベンチャー企業に関連する業務を希望していました。世の中に新しい価値を提供する仕事に会計士というスタンスでかかわりたいというのが、学生時代からの夢でしたから。ですが、配属されたのは国際部という、主に外資系企業の日本法人の監査を行うセクションで、大手外食チェーンなど小売業を主に担当しました。自分で英語力が足りないと思っていましたから、国際部での監査業務は非常に勉強になりました。
監査の実施に当たっては、その会社の社員の方でも目にすることができない書類を閲覧する場合も。あくまでも第三者的にですが、いろんな会社の意思決定のやり方などに触れることができ、そういう部分が特に興味深かったし、学ぶことが多い業務でしたね。
事業会社に行こうと思い立った動機を教えてください。
内橋「会計士になりたい」というよりは、「会計士になって得られる経験・知識を基にビジネスのサポートをしたい」というのが、私の基本的なスタンスでした。実際に監査をしていても、「ビジネスを知らないのに、果たして正しい判断ができているのか」という思いが、どんどん強くなりました。だったら、せっかくいい制度があるのだから、企業に入って現場の仕事というものを経験してみようと、決断したわけです。
この制度自体は2010年からスタートしたのを知っていましたが、出向は公認会計士登録が条件でした。私はその時点では登録のための試験を受験した段階でしたので、1年いわば“浪人”し、昨年応募しました。
三井物産に出向が決まった時の印象はどうでしたか?
内橋どの会社に出向するのかは神のみぞ知るだったので、聞いた時にはまさか自分が総合商社に行くことになるとは、と正直驚きました。監査法人ではインチャージ経験を始めた段階でしたから、自分で手を挙げておきながら、出向前はものすごく不安になりました。
配属された会計基準室とは?
内橋会計基準のリサーチおよび発信、社内会計制度の企画・立案などの業務を行っており、現在は約20名の体制で、連結グループとしてのIFRS導入プロジェクトのマネジメントオフィスとして機能しています。14年3月期からの適用に向けて、IFRSによる連結財務諸表作成は始まったばかりです。ちなみに私は、金融商品、連結範囲などを主に担当しています。
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三井物産株式会社経理部 会計基準室内橋 孝
三井物産株式会社執行役員 CFO補佐兼経理部長
当初経理部では、4年ほど前から公認会計士の出向受け入れを始めた。現在は4つの監査法人などから7名の会計士に来てもらっている。会計事務の高度化、複雑化に、社内の人材育成のみで対応するのは難しい。外部の専門家に入ってもらい、互いに切磋琢磨していこうと考えたのが、受け入れのきっかけだ。
この「出向制度」では、昨年、内橋君含め2名を受け入れた。IFRS導入プロジェクトに参加してもらうためだ。しかし実は、彼はIFRSの専門家ではなかった。それが今では、海外にまで出かけて堂々と基準を説明するほどの、いっぱしのプロである。資格による“免許”力とは、そういうものなのだと改めて感じる。制度が継続されるのであるならば、今後も積極的に活用したい。企業の現場を知る会計士が監査の現場に増えることも、非常に意義深いことだと考えている。