熱き会計人の転機
Carstay株式会社
CEO/代表取締役 公認会計士宮下 晃樹
会計士を志したきっかけと理由を教えてください。
宮下直接的には友人に誘われてのことですが、熱中できる何かを探していたんです。大学付属の中高で部活に打ち込んでいた反動で、大学に入ると燃え尽き症候群に。周りの優秀な人たちと自分を比べてモヤモヤしてもいました。会計士の勉強ならゼロから積み上げていけますし、数学も得意なほう。試験勉強を始めるとすぐにハマりました。
就職したのはトーマツです。スタートアップに興味があり、IPO支援業務を行うトータルサービス部への配属を希望しました。国内最大規模のベンチャーキャピタルの監査や上場支援など、幅広い業務を経験させてもらいました。そして、外側からではありますが、スタートアップの現場に触れ、その面白さに惹かれていったんです。
もともと知的好奇心が強い性格です。そのうちに「人生一度しかないのだから」と、自分も“そちら側”に行きたいと考え始めました。会計士資格を持っているからこそ、誰もやったことがないビジネスで起業すべきなのではないか。事業計画などの数字づくりも、会計士の自分が考えればかなり正確にやれそうだという自負もありました。仮に失敗しても、会計士の資格を生かした仕事で再チャレンジすればいいわけですから。
トーマツ入所ほどなくして、訪日外国人旅行者向けに日本のローカルと交流する場を提供するSAMURAI MEETUPS(以下、SMU)の活動も始められました。
宮下商社マンである父の仕事の関係で、2歳から7歳までロシアで暮らしました。アジア人差別が強い時代だったのに、嫌な思い出がまったくない。むしろ地元の方々に大切に育ててもらった記憶があります。大学時代、米国に留学した時もローカルの温かさを感じました。
東京五輪が決まってインバウンドを盛り上げる機運が高まり始めた頃、「これは自分の出番だ」と直感。今度は自分が海外の人たちのためにローカルと交流できる場をつくろうと考えたんです。それがSMUです。トーマツにいた頃は勤務後に外国人を飲みにつれていく毎日でした。「出会えてよかった」と目の前で喜んでもらえて、2度、3度と日本に来てもらえる。これは本当に嬉しいことでした。
2016年6月にはSMUのメンバーは50人を超え、企業からも提携いただけるようになっていました。これはビジネスになりそうだ。だったら“フルスイング”してみよう。そんな思いでトーマツを退所し、SMUをNPO法人化したんです。
SMUでは都合4年間で延べ1200人の外国人をガイドしました。ただ、それ以上の成長性には疑問が……。案内する外国人も徐々に「日本の田舎に行きたい」「自然の中でキャンプがしたい」とオーダーが広がってきていました。私たちだけが案内するにも限界がある。それならアプリで完結できるサービスはつくれないか。検討するなかでたどり着いたのがカーステイのビジネスモデルでした。
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Carstay株式会社CEO/代表取締役 公認会計士宮下 晃樹
Carstay株式会社
私もSMUに参加していた人間です。「宮下についていけば面白い人生になる」とずっと思っていましたから、カーステイを一緒にやらないかと誘われた時も、単純に「よし、やろう」と。彼の熱意と行動力は同世代のなかでも突出しています。SMUでもそうでしたが、面倒なところは全部背負ってしまう。かかわる人がハッピーになるならそれでいいと自己犠牲を厭わない。周囲の人間は、そんなところに魅力を感じて「宮下が見ている世界を盛り上げたい」と思ってしまうんでしょう。ただ、大風呂敷を広げるところもあって、「何とかなるでしょ」で始め、後で大変な目に遭うことも(笑)。それも面白い経験です。大風呂敷が本当になる日もそう遠くないと思っています。
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