The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社M&A総合研究所
取締役 管理本部長荻野 光
2022年6月、M&A仲介事業を展開する株式会社M&A総合研究所が東証グロース市場に上場を果たした。AIによる買い手と売り手のマッチングなど、徹底的なDXによる業務効率化で差別化を図る同社は、市場からの評価も高く、時価総額は1500億円を超えた(22年2月末現在)。同社のIPOを牽引したのは大手監査法人出身の荻野光氏。「時価総額1兆円を超えていくことを目指す。IPOはスタート地点にすぎない」と、若きCFOは未来を見据える。
会計の知識は身につけておいたほうがいい。荻野氏にそうアドバイスしたのは、会社を経営していた父だった。
「父は経営するなかで会計知識の重要性を理解し、会社員であったとしても身につけるべきスキルであると言っていました。私も父の影響を受け、漠然とではありますが高校生の頃から自分でビジネスをしたいと考えていたため、公認会計士を目指して会計というものを勉強することは無駄にはならないと判断しました」
いつか自分でビジネスを――。そのために必要なステップとして監査法人では「5年は働く」と決めていた。「大学生の時に、40歳でリタイアするにはどうしたらいいか模索しており、卒業してたった18年しかないなかで何に時間を使うか検討した結果、最初の5年は監査法人で経験を積むことが最適であると考えました」。入所したのはあずさ監査法人。IPO準備企業を多く担当する部署を希望し、上場企業の監査とIPO準備企業の監査をバランスよく経験することになる。
「上場企業と上場準備企業、対照的な2つを見ることができたのは非常によかったですね。また、上場企業であってもまだ整っていない部分が散見される会社もあり、自分がいずれ事業をする時に参考になると思いながら監査業務をしていました」
入所前からの期待はもう一つあった。会計士として監査業務を行えば、会社の中長期的な経営戦略に関する資料など、事業会社に就職した同世代の人たちにはアクセスできない情報も目にできる。世の企業がどうビジネスを行い、どう儲けているか、そこを20代前半からの数年間でしっかり見極めておきたいと考えたのだという。
「期待どおりの経験ができました。業務上必要とあれば、クライアントの経理担当のみならず、営業担当やプロダクト担当のお話も聞けるなど、自分の知見が広がっていく感覚がありました」
そして5年が過ぎた。自分で温めていた事業アイデアもあったのだが、起業は時期尚早と判断。「社長と近い立場で、会社を立ち上げていく経験を積むべき」と転職活動を開始する。必然的に候補にあがるのはベンチャー企業。しかも「設立3年未満」で「CFOがいない」「上場を目指している会社」を条件とした。
「監査法人での経験を生かしつつ、できるだけゼロに近いところから会社を成長させていきたいと考えました」
結果、候補は業種も異なる4社に絞られたという。
「最終的にM&A総研に転職を決めた理由は、経営者です。当社の佐上(峻作CEO)は、経営を数字にブレイクダウンして説明できる。例えば、上場する3年後の売り上げ、営業利益、純利益が〇円で、PERが〇倍、時価総額は〇億円になるだろうと。このタイプの経営者は強い。監査法人時代、IPO準備中の企業をいくつも見てきましたが、数字がわからない経営者は事業を伸ばせていませんでしたから」
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株式会社M&A総合研究所取締役 管理本部長荻野 光