
大原大学院大学 会計研究科 教授
青山学院大学 名誉教授 博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二
実は同グループの瀬戸健社長は、本業のボディメイク事業とは無関係であっても、安価で買える不採算企業を矢継ぎ早に買収していた。その結果、“負ののれん”により表向きの業績は伸びたものの、グループ内に“含み損のある資産”が積み増すことになったのだ。
そうした不健全な財務状況から脱却するために、瀬戸社長は経営方針を転換し、18年11月には新規企業買収の凍結を発表した。同時に、不採算企業の売却、減損処理などを進めた結果が、大幅な赤字だったわけである。それによる企業イメージの悪化といったダメージも小さくはなかったが、もしその後も拡大戦略を継続し、大手術を行わずにいたら今頃どうなっていたかは、想像に難くない。この転換を促したのが、誰あろう太陽有限責任監査法人であり、そのことが“経営のプロ”に賛辞を語らせたのだった。
この一件から監査業界が受け取るべきは、「適正で厳格な監査は、結局経営のためになる。企業を救うこともある」というメッセージにほかならない。もちろん、経営者の側に、会計プロフェッションの判断を尊重しようという意識がないと、理想を貫くのは難しいかもしれない。しかし、“おざなりの監査”が許されない時代にあることは、幾多の会計不祥事で証明済みだ。経営者の目を覚まさせることも監査人の任務であるという自覚と覚悟を持ち続ける必要がある。それは、結果として、信頼しうる資本・証券市場の番人としての社会的な役割を果たすことなのである。
大原大学院大学 会計研究科 教授青山学院大学 名誉教授 博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二
慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得。博士(プロフェッショナル会計学・青山学院大学)。青山学院大学経営学部教授、同大学院会計プロフェッション研究科教授を経て、名誉教授に。 2018年4月、大原大学院大学会計研究科教授。日本監査研究学会会長、日本内部統制研究学会会長、金融庁企業会計審議会委員等を歴任し、職業倫理、内部統制、ガバナンスなどの研究分野で活躍。