- vol.50
-
「第二期 第6回基調講演 女性専門職業人が判断を下す時の課題」
参議院議員・公認会計士・税理士
竹谷 とし子
藤沼塾レポート
金融庁
総括審議官佐々木 清隆
さて、内外で会計不正が表面化し、さすがに「問題が起こっても、監査法人はお咎めなし」の時代ではなくなっている。各国で監査法人を検査・監督する仕組みが構築され、我が国でも04年に金融庁公認会計士・監査審査会が設置された。私は11年から15年まで事務局長を務めたのだが、その立場になってみると、金融機関の検査をしていた時とは、また別のものが見えてきた。一言でいえば、監査が表面的なのである。作業が会計基準に則って行われるのは大事だ。ただ、それだけでは不十分で、例えば対象になっている企業のビジネスに対する理解が浅くては、正しい監査ができるわけがない。
ある企業の海外取引に関する監査が問題になった。ドメスティックな会社で、「海外と取引すること自体おかしい」という視点を持つべきだったのに、“基準”という枝葉末節しか見なかったために起こったミスだった。こうした例を、現場ではよく目にしたのだ。
監査の質はなぜなかなか上がらないのか? それを突き詰めていくと、監査チームのやった仕事をきちんとチェックする品質管理の機能が弱い、という課題が浮かび上がる。監査法人に限らず、営業や企画から内部監査の部門に配属されれば“左遷”、というカルチャーがあるのは否定できない。そういうところから変革しなければ、いくら規定をつくって研修しても、効果は限定的だろう。
長々と監査、専門家意見に対する意見を述べてきたが、それは取りも直さず我々当局に突き付けられた課題だと認識している。我々自身が、「もっと表面的ではない、全体を俯瞰した検査・監督」を実現しなければならない。「金融処分庁」から「金融育成庁」への脱皮を目指して、必要な見直しを図っていきたいと考えている。
金融庁総括審議官佐々木 清隆
ささき・きよたか/1983年、東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。98年に金融監督庁(現金融庁)検査部(局)総括補佐、企画官。金融機関の不良債権問題を担当し、2005年から証券取引等監視委員会特別調査課長。カネボウやライブドア事件など粉飾決算事件に携わる。17年から現職