- vol.50
-
「第二期 第6回基調講演 女性専門職業人が判断を下す時の課題」
参議院議員・公認会計士・税理士
竹谷 とし子
藤沼塾レポート
鳥飼総合法律事務所
代表弁護士 税理士鳥飼 重和
税理士の使命について、税理士法は「税に関する専門家として、(中略)納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図る」ことと定めている。公平な納税を担保するのが、我々の主たる任務であることは、論を待たない。しかし、世の中には「払わなくてもいい税金を支払っている」ケースも珍しくない。時代の変化に追いつかない税制が、企業活動の足枷になることもある。税の専門家として、そうした問題の解決にも力を発揮してほしいという社会の要請に、残念ながら税理士業界は、ほとんど応えられていない。
弁護士も同様で、「その行為は法律に触れる可能性がありますから、やめましょう」とブレーキをかけるだけの存在に、当然ながら企業は価値を認めまい。ガラパゴス化した“専門性”が、自らの職域を狭める結果を招いているのだ。
法律抜きの経営はありえない。違法な振る舞いが許されないというだけにとどまらず、逆に国なりが認めた“合法性”という錦の御旗を掲げることができれば、それは武器にもなりうる。一方会計は、経営の“見える化”にほかならない。「キャッシュフローがよくない」という客観的事実は、会計処理によって初めて明確になる。重要なのは、その時求められるものが、「これは困った」という現状認識ではなく、「ならばこうしよう」という未来思考であることだ。
日本企業のおよそ7割は赤字である。この状況を打開し、企業の成長性を高めることができれば、雇用も給料も増やせるはずだ。経営に不可欠な法律と会計の専門家ならば、常にそうした問題意識を持つ必要があるのではないか。従来の職業専門家としての任務に加えて、社会全体の利益を実現していかなければならない使命があることを、きちんと自覚すべきだと思うのだ。
この記事の続きを閲覧するには、ご登録 [無料] が必要です。
鳥飼総合法律事務所代表弁護士 税理士鳥飼 重和
とりかい・しげかず/1970年、中央大学法学部卒業。税理士事務所に勤務後、39歳で司法試験に合格。43歳で弁護士登録。94年、鳥飼経営 法律事務所開設。2000年、鳥飼総合法律事務所に名称変更。企業法務、税務訴訟を専門分野とし、その専門性の高さには定評がある。日本経 営税務法務研究会会長、日本IR学会理事。