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「第二期 第6回基調講演 女性専門職業人が判断を下す時の課題」
参議院議員・公認会計士・税理士
竹谷 とし子
藤沼塾レポート
株式会社豆蔵ホールディングス
代表取締役会長/公認会計士荻原 紀男
私がちょうど30年前に公認会計士になった頃、その職業はほとんど知られていなかった。中央大学商学部時代、友人の一人が「アメリカでは、今すごく人気が高い。いずれ日本でもそうなる」と語るのを聞いたのが、資格試験にチャレンジしたきっかけだった。
その資格が、後に就任した企業のCEOとしての任を全うするのに役に立ったのかと聞かれれば、即座に「YES」と答えるだろう。会計、税務の心得があれば、「これだけ売り上げれば、最終利益はこうだ」と、かなりはっきり読める。業績を細かく分析して、先々の見とおしを立てることができる。そうしたスキルが、難しい経営判断を迫られた時に威力を発揮した例は、枚挙に暇がない。
東芝問題をはじめ、企業の「不正会計」が後を絶たない。ああいうことがあると、会計監査にも批判の矛先が向くのだが、会計士に責任を被せ過ぎるというのが、私の感想だ。率直に言って、悪いのは経営者である。「私の与り知らないところで……」といった類の言い訳をする人もいる。だが、社会的に糾弾されるようなレベルの「重要事項」が、経営の課題に上らないわけがないではないか。
会計士のみなさんに声を大にして言いたいのは、「監査の現場で折れてはいけない」「正しいと思うことを貫いてもらいたい」ということだ。誤解を恐れずに言えば、日本の経営者に、会計士が恐れるような優秀な人間は、ほとんどいない。あなた方がビビる必要など、微塵もないのである。
ただし、注文もある。私たち経営者は、四半期ごと、単年度ごとの業績で評価を受ける。ともすれば、視野はミクロになりがちだ。しかし、仮に今の経済状況の中で増収・増益を確保したからといって、褒められた話ではあるまい。5年後、10年後、そのビジネスモデルは生き残っているのか? リーマンショック級の経済変動が起こり、またぞろ大リストラに走ってはいないだろうか?――そうしたマクロの視点が、経営には不可欠なはずである。そして会計士にも、それを持ってほしいと思うのだ。
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株式会社豆蔵ホールディングス代表取締役会長/公認会計士荻原 紀男
おぎわら・のりお/1980年、中央大学商学部卒業。83年、公認会計士第二次試験合格、アーサーヤング公認会計士共同事務所(当時)入所。96年、独立し個人事務所を開設。2000年 株式会社豆蔵(現豆蔵ホールディングス)を創業、取締役就任。03年 代表取締役社長に就任。18年、会長に就任。税理士法人プログレス代表社員。豆蔵柔道クラブ道場長。