
青山学院大学大学院
会計プロフェッション研究科教授・博士八田 進二
今の大企業の監査では、意見表明の基礎を得るため、文字どおりの人海戦術による監査調書の作成に追われる。いきおい、極めて微細な、あえて言えば枝葉末節的な作業に時間を奪われることになる。そのため、事業を取り巻く環境変化や事業上のリスクをといった大局的な視点が失われている、という現実があるのは確かだ。
納得いくまで証拠固めを行うことは、監査のイロハだ。しかし、それによって、監査自体が“木を見て森を見ず”になってしまっては、本末転倒のそしりを免れまい。
こうした時代だからこそ、会計士は会計の世界だけに閉じ籠もっているのではなく、企業を知り、経営を知り、ビジネス感覚を磨く必要がある。今回問題になったコーポレートガバナンスも、会計士にとって無関係な領域ではなくなっている。それもまた、「東芝事件」の教訓にしなければならない。
青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授・博士八田 進二
慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(プロフェッショナル会計学・青山学院大学)。2005年より現職。現在、日本内部統制研究学会会長、金融庁企業会計審議会委員を兼務し、職業倫理、内部統制、ガバナンスなどの研究分野で活躍。