会計士の肖像
PwC税理士法人
代表宮川 和也
PwC税理士法人の代表に就任したのは12年。パートナーの総意で選出された宮川は、期せずして、人生のキーパーソンである鈴木氏からバトンを引き継いだのである。"現場好き"の宮川が、代表となってその現場を離れることに寂しさはあったが、「選ばれた以上、全力を尽くす」と決めた。
代表に就いた時、まず思ったのは「難しい」ということ。それまではクライアントから具体的なアジェンダをいただき、それに対する回答を考えればよかったのが、代表は誰からもアジェンダをもらえない。当たり前ですけど、自分で課題を見つけ、計画を立て、実行しなければなりません。いうならば、究極のお題は「ファームの成長」ですが、とても抽象的です。だから、リーダーとして自分のすべきことは何なのか、悩みもしました。
そんなある時、ビジネス誌を読んでいたら、若くして上場会社の社長になった方のコメントが目に飛び込んできた。その方も、やはり就任当初は悩んでいたが、リーダーとして3つの「すべきこと」を決めたというんですね。まず会社の目標を設定すること。次に、その目標達成に向け従業員を鼓舞すること。そして最後は、何かあった時は自分が責任を取ること、です。これがストンと腹に落ちたんですよ。
そもそも人間一人の力には限界があって、大勢の人間が協力して初めて大きな目標が達成できる。幸い、私はプロである優秀なパートナーとスタッフに恵まれているので、目標を指し示し、モチベーションを与えれば、自発的にそれに向かって進んでくれます。もちろん問題が生じないわけではありませんが、最後は私が責任を取るから「やってください」です。この信頼関係があれば、大概のことは乗り越えられるし、この6年間、無事にやってこられた理由だと思っています。
昨年より、大きな動きも出ている。より高付加価値な税務サービスを実現するための施策「IST(Insourced Solutions for Tax)」の誕生である。これは、GEの税務部門でコア業務に就く600名超の人材をPwCが全世界で同時に採用した、グローバルかつ大型のディールだ。
ISTとは、GEとPwCの協働から生まれた新しいサービスです。ますます複雑化し、競争も激化している国際税務環境において、これは日本企業にとって、また私たちにとっても変革のチャンスになると考えています。日本企業はすべてを"自前"でやろうとする傾向がまだ強いですが、欧米ではGEのように、税務部門をアウトソースする企業が出てきています。所有ではなく共有の発想、まさに、シェアリングエコノミー。グローバル企業の税務の問題は複雑化し、もはや個々の企業で対応することが困難になっています。企業競争力を確保するために、早晩、日本企業でもこういった共有の動きが出てくると信じています。私たちも、課題解決の立場を超えて企業活動の一部を担うことで、経営者目線で能動的にクライアントと一緒に価値を共創する。税務アドバイザーからビジネスパートナーへ―― まさに変革の時代なのです。
テクノロジーの進化も見逃せません。「この業界のかなりの部分の仕事がAIに駆逐されるのでは」という声もよく聞きます。確かに機械化は進んでいくでしょう。でも、税務プロフェッショナルにしかできないヒューマンタッチな領域は必ず残る。だからこそ現状に満足することなく、変革を起こし、より付加価値の高いサービスをクライアントに提供できるよう自らを高めていくべきなのです。世俗的な言葉にはなるけれど、失敗を恐れずにチャレンジしましょう、と。オポチュニティの神様には後ろ髪がないのですから。たとえ失敗しても大概のことはやり直しがきくものだし、必ずそこには成長の跡が残ります。それが「やるか、やらないか」、フィフティフィフティの選択に対峙した時、必ず「Do it!」を選んできた私の信条です。
PwC税理士法人代表宮川 和也