会計士の肖像
株式会社ちふれ化粧品
代表取締役社長片岡 方和
片岡は、アローの社長をしていた95年に同社の非常勤取締役に就き、独立後の08年には専務に。そして10年、同族以外では初めての社長となった。トップとして欠かさないのが、週1回の川越工場(埼玉県)視察である。そこには、「足繁く通い、現場を見る」のとは別に、もう一つの狙いがあった。
私が本社を〝空き〞にすることが大事なのです。みんな、ちょっとほっとして仕事ができるでしょ(笑)。その間に、いいアイデアが生まれるかもしれないじゃないですか。たまに社員を叱るのは、会社にとってネガティブ、マイナスなことが起こった時に、それを速やかに私に報告しなかった場合です。自分たちで解決できるんじゃないかと考えていろいろやっているうちに、手遅れになる。これが最悪なのです。
遺憾ながら、商品の自主回収を経験したこともあります。「安全、安心」「高品質」をうたう当社にとって、あってはならないこと。こうした事態も、いろんな報告が遅れなければ、未然に防げたはずなんですね。「釜にちょっとだけ異物を混入させてしまいました」という報告が上がれば、私は即座に「何千万円の損失になっても構わないから、廃棄しなさい」と命じるでしょう。なんだかんだいって、社長の権限は絶対です。
とはいえ、社員から「あの社長に何を言ってもダメだ」と思われていたのでは、いくら「話を上げろ」と言っても絵に描いた餅。そうならないために、常日頃から、私は私に対する異論を歓迎します。会議の場では、「とにかく自分の考えを言ってほしい」と促します。社長の権限を、十分な裏付けを持って行使できるだけの勉強もしているつもりです。社長が〝裸の王様〞になったら、その企業は終わりですから。
「どうしても経理で仕事をしたい」という思いをきっかけに、ほぼ10年越しで取得した会計士の資格である。企業のトップに就いた今、そのキャリアは、自らの中でどんな位置を占めているのだろうか。最後に水を向けてみた。
それはもう、ものすごく役に立っています。会社をまともに経営するうえでも、株主に対する説明責任を十分果たすためにも、法律と会計の知識が不可欠なことは、論を待ちません。その部分を経営者自ら語れるのか、他人のフォローに委ねなければならないのかは、決定的な違いだと思うのです。
当社は株式を公開していませんが、もし上場しても、株主総会でどんな質問が飛んできても大丈夫だという確信が、私にはあるんですよ。会計のプロであるだけでなく、商法、会社法なども学んだ公認会計士だからこそ、そんなことが言えるわけです。
いうまでもなく、常に管理会計を意識して、出てきた数字を理解し判断を下せるかどうかは、経営にとって非常に重要です。例えば、今は売り上げと利益とどちらが大事なのか?シェア獲得が最優先課題だとなれば、利益にはある程度目をつぶって、売上増に全力を上げようということになるでしょう。そうしたその時々の決断に、会計士を目指して勉強し、そこで得た知識が丸ごと生きていることを、私は日々実感しています。
多少自慢めいた話をしたのも、会計士のみなさんに、どんどん〝新しい世界〞に入ってきてほしいから。例えば現場に理論的な話を持ち込む。そんな会計士が増えたら、活躍領域の拡大に大いに寄与するはずです。
企業に入るのも大歓迎です。初めから社外監査役を狙うなどというケチなことを考えずに(笑)、若いうちから本体に飛び込んでもらいたいですね。その場合も、「私は経理で頑張ります」というような狭い了見に捉われる必要は、ありません。例えば工場に行けば、原価計算もあれば、採算性の見極めもある。会社というところには、会計知識を必要とする、それが生かせる課題が、そこここに転がっているのです。
みなさんには誰もが持てるわけではない会計士資格という〝核〞がある。自信を持って、そのキャリアを最大限生かせる道を探してほしいんですよ。
※本文中敬称略
株式会社ちふれ化粧品代表取締役社長片岡 方和