会計士の肖像
アタックスグループ
代表パートナー林 公一
新天地で、水を得た魚のように働く林だったが、目の前の難題を次々こなし、自信をつけるにつれ、徐々に「限界効用が逓減を始めた」ことを自覚するようになる。この道を究めるより、新しい刺激がほしくなってきたころ、両親が帰ってこいと。結果、次なる決断を実行に移すのだった。
海外で大企業の会計監査をやった経験は、僕にとってのブランドだと思っています。自信をもってM&Aを回せるのが、第2のブランドでしょう。でも、英語で会計ができてM&Aをやれる人材は、実は会計士業界には意外とたくさんいる。彼らと差別化するためには、どうしたらいいのか?
会計監査の対象になるのは、所有と経営が分離した世界ですよね。しかし世の中には、「所有と経営が一体」のオーナー系のフィールドがあるわけです。さらにこことも話が通じる人間となると、そうはいないはず。そう考えて、中小のオーナー企業相手の仕事を経験できる場所を探した結果、出合ったのが当社だったのです。あえて名古屋が本社の会社を選んだのにも、ちゃんとした理由がありまして、両親が「そろそろ愛知に帰ってきたらどうか」と。「自分は長男」という自覚も、親によってちゃんと刷り込まれていたんですね(笑)。
「自分が本当にやりたいのは、何なのか」を見極める時期、結果的には「5年計画で成果を上げ、次の判断を下してきた」と林は言う。NY勤務しかり、M&Aの仕事もしかり。そして「この会社に骨を埋めよう」と決意したのも、入社してから5年が経った時だった。
一部上場企業の社長で、会社のために10億円の個人保証をしている人が、果たしているでしょうか?でも中堅・中小企業のトップには、ザラにいるわけです。そんな人たちと話をするのは、本当に刺激的で楽しいですよ。監査と違って、そこでは会計士の肩書は意味を持ちません。「先生」と呼ばれて、一目置かれることもない。いろんな意味で背負っているものが違いますから、おっしゃることは時に辛辣でもあります。「会計士はいいけど、それがどういうふうに私の役に立つのかね?」と、目の前で言われるわけです。
でもそんな社長と、IPOとか経営計画の策定とか業務管理制度の導入だとかのスポット案件で知り合い、こちらの腕を見せながら信頼を勝ち取り、顧問契約をしてもらって、いろんな経営の相談に乗っていくという仕事には、ほかにはないやりがいを覚えるんですよ。抱えるものは会社によって、というより社長によって違いますから、限界効用が逓減することもない。
企業再生案件で、社長と銀行に頭を下げに行ったこともありましたね。「どうか債権を放棄してください」と。当然ボロクソ言われるわけですが、ひたすら「お願いします」と平身低頭。会計士の仕事だと思えないでしょ(笑)。でも帰ってきてから、「よく一緒に行ってくれた」と感謝されて。そこからV字回復を果たしたその会社とは、長い付き合いが続いています。
当社の社是は「最良の社長の相談相手になる」。僕には、それがすごくしっくりくるというか、そのために努力するのが面白い。例えばオーナー企業では、今事業承継が大きな課題になっています。かつて事業承継といえば、親族内承継を前提とした自社株対策ばかりでした。しかし現実には、M&Aなどの選択肢もあるわけですね。当グループには、税務の流れで事業承継や相続をやっているチームもあれば、M&Aも強い。それらをパッケージにして、悩んでいるオーナーさんに提供できるのです。そういうふうに、自分の思いを実現できるサービスラインも整っている。それが了解できた時、「一生ここで頑張ろう」と思えたんですよ。
アタックスグループ 代表パートナー林 公一