会計士の肖像
PwC Japanグループ グループマネージングパートナー
PwCコンサルティング合同会社
代表執行役会長鹿島 章
そういった大阪でのオペレーションが評価され、ベリングポイントの日本法人トップから鹿島に声がかかった。「ジャパン全体で、一貫したサービスを提供できる態勢にしたい」と。大阪と東京の会計コンサルチーム、その両方を“見る”ことになった鹿島は、07年から行き来を繰り返すようになり、「気がついたら週5日が東京になっていた(笑)」。鹿島の活動拠点は、東京へ移ったのである。
全体がある程度うまく回り出した頃、今度は、ベリングポイントがいつ潰れてもおかしくないという状態になった。米国本社がチャプター11を申請したのが09年。その前後は、アンダーセンの時と同じです。「本社はダメですけど、日本法人はキャッシュもあるので大丈夫です」とか、プライスウォーターハウスクーパース(以下PwC)の傘下に入ると決まってからは「安心してください」と、お客さまへの説明対応に追われました。「またか」ですよ。ただラッキーだったのは、ベリングポイントが日本ではさほど知名度が高くなかったこと。アンダーセンの時のような“劇場型”ではなかったし、むしろ、PwCのほうが有名で「いいじゃん」みたいな(笑)。僕は一度経験しているから、たとえ会社が変わっても、メンバーや仕事がしっかりしていれば大丈夫だ、という自信もありました。
ただ、09年はリーマンショックの翌年ですから、別の意味でしんどかったです。製造業を中心とした多くのお客さまのプロジェクトが立ち消えになってしまった。とりわけコンサルティングビジネスは厳しく、全体としても業績的に苦しかったですね。残念ながら、人も減らさざるを得ませんでした。
2年後あたりから回復基調になりましたが、その時に行ったのが大きな組織改編です。それまで、会計とか人事とか、切り口を中心に編成していたコンサルチームを、インダストリーとソリューションに分けて縦横を成すチーム編成にしたのです。僕は前者のチーム立ち上げをやり、それからは全体のリーダーとして、コンサルティングビジネスのリカバリーや、グローバルとのネットワークづくりなどを中心に動いてきました。現在は、一度700人ほどに減った従業員数も1500人を超え、ビジネス規模も倍になった。完全に成長拡大フェーズへと切り替わった感じでしょうか。
16年3月、日本におけるコンサルティング部門を統合する「PwCコンサルティング」が設立され、鹿島は代表執行役に就任。7月には代表執行役会長に就任した。PwCJapan全体のグループマネージングパートナーの任も担う今、鹿島にとっての最大の関心事は、日本のグループ全体を「どうやって強くしていくか」だ。その肝は、総合力にあるという。
テクノロジーの著しい進化もあり、お客さまが抱える経営課題はますます多岐にわたり、かつ複雑になってきています。もう昔のような単品ソリューションでは、お客さまに対する付加価値を上げることはできません。何をどう組み合わせていくか、先ほどの幕の内弁当じゃないですけど、やはり総合力でもってインパクトを出していかないと、我々自身も残っていけない。その意味において、世界に二十数万人を有するPwCのケイパビリティは、実に優位性の高いものなのです。
PwCJapanグループにおいても監査、コンサルティング、税務、法務などの専門性を持った5000人以上のスタッフがいます。プロフェッショナル・ファームですから、これまではどちらかというと狭い専門性のなかで育ってきた人も多いでしょう。お客さまから幅広い経営課題を提示された時、「PwCの持てる力をすべて発揮して解決しましょう」とは言えても、その実行まで明確にイメージすることは容易ではありません。ですから、僕が今最も注力しているのは、法人間、部門間の垣根をなくすこと。グループ内で情報共有を活発に行い、異なる専門性を持ったメンバー同士がいつでも連携して仕事ができるような仕組みや風土づくりを進めているところです。もっと我々の力を組み合わせれば、すごくいいサービスが提供できると、僕は思っているんですよ。PwCのケイパビリティをもってすれば、日本企業がグローバルで勝ち残っていくお手伝いを、もっともっとできるはずです。
今の日本企業にとって一番の課題は、経営戦略の立案にも深く関与し、グローバルな企業活動をマネジメントできる本当の意味でのCFOが少ないこと。そして、それを相手にできるプロフェッショナル・ファームも少ないということ。数字という強いバックグラウンドを持つ会計士には、その素養があるはず。例えば、監査というトラックのなかだけで生きていると、視野が広がらないと思うのです。事業会社で幅広い経験を積んでCFOになる道もあるかもしれないし、監査法人や会計事務所においても、今はディールやコンサルティングなど、様々な経験を得ることができます。監査をスタートに、ビジネスを学んできた僕自身がそうであったように、この世界の広さを楽しんでほしい。そうすれば、キャリアはもっと豊かなものになるはずです。
※本文中敬称略
PwC Japanグループ グループマネージングパートナー
PwCコンサルティング合同会社
代表執行役会長鹿島 章