会計士の肖像
PwC Japanグループ グループマネージングパートナー
PwCコンサルティング合同会社
代表執行役会長鹿島 章
時を待たずして、鹿島は大きなプロジェクトに巡り合い、その充実した仕事に確かな手応えとやりがいを得る。97年から、グローバル自動車部品メーカーと取り組んだ「グループ経営管理プロジェクト」。これが大きなステップとなった。
アメリカから帰国した後の初出勤の日に「鹿島、今日の昼から出張に行くぞ」と、始まりは突然だったんです。行き先を聞いても、それが何県にあるのか知らず、「どこですか?」みたいな調子(笑)。それが、長く続くプロジェクトの実質的なキックオフミーティングでした。「今後、グローバルに成長していかなくてはならない」という、強い思いを抱くお客さまの下で進めたのは、すでにアメリカ、アジア、ヨーロッパに展開していたグループ会社を連結で取りまとめていくもの。当時としては非常に先進的なプロジェクトでした。90年代はまだ連結財務諸表はサブでしたし、日本の会社で、連結ベースで数字を見ている会社はほとんどなかったですから。文字どおり、グループ経営を管理するプロジェクトのお手伝いをさせてもらったわけです。十数人がお客さまの独身寮でお世話になりましてね、1年以上みっちり詰めての仕事でした。
海外では連結経営が当たり前でしたから、事例を探りながら、「こういうルールで月次連結をしましょう」「事業部別も毎月連結ベースにしましょう」というように、みんなで一から考えてつくっていったんです。とても優秀な会社なので、濃密なディスカッションができたし、僕自身、ものすごく勉強させていただいた。今でも一番印象に残っている仕事ですね。
追って、会計基準の大改正があり、2000年代前半は、こういったプロジェクトに携わる機会がすごく多くなりました。なかでも、僕が責任者を務めた総合商社のグループ経営管理プロジェクトは規模が大きく、このあたりから、「コンサルティングでやっていける」という確かな感触を得たように思います。まだ30代半ばと若かったけれど、僕は本当にお客さまに可愛がられ、信頼も寄せていただいた。巡り合わせも含めて、恵まれていたと思います。
時を前後して、鹿島を取り巻く環境は大きく変化している。01年に発覚したエンロン事件によって、アーサーアンダーセンが崩壊。鹿島は、その渦中に身を置いていた。結果的に、鹿島が所属していた部門は、KPMGコンサルティング(02年、ベリングポイントに改名)による買収で存続にはなったが、プロジェクトを抱えながらの対応は「本当に大変だった」。
僕がパートナーに就任したのは、エンロンが“チャプター11”になる少し前。その後、アーサーアンダーセンのエンロン監査チームが監査調書を大量に破棄した事件が発覚してからは、頻繁に緊急パートナー電話会議に招集されていました。複数の大きなプロジェクトを動かしていて、それで精一杯という状況のなか、組織は混乱にあったし、お客さまからは当然、「これからどうなるのか」と心配されるわけです。アーサーアンダーセンは有名だったから、日本での報道もすごかったですし。
KPMGと一緒になるにあたり、プロジェクトも全部移管する必要がありました。担当顧客に対して、「会社が変わるんですけど、このままプロジェクトを継続させていただけますか」と、説明に回りまして……。ありがたいことに、僕がやっていたプロジェクトはすべて継続になりました。「鹿島さんたちメンバーがやってくれるのなら、最後まで」と言ってくださった。一方で、プロジェクトの途中でメンバーの入れ替わりがあるとけっこう大変なのですが、皆、移管後もプロジェクトの切れ目まで一緒にやってくれた。本当に助かりました。お客さま、そして共に仕事をしてくれる仲間、この時ほど、その“ありがたみ”というものを感じたたことはありません。
業務は変わらないとはいえ、会社の戦略というか、カラーは違うものです。アンダーセンは、どちらかというと業務コンサル寄り。ベリングポイントは、大手ソフトウエアベンダーとの連携を筆頭としたシステム導入にソリューションの核を置いていた。方向性が違うということで、辞めていった旧アンダーセンのメンバーもけっこういたんです。
ですが、僕らは小さいチームながら、業務コンサルからシステム導入まで、わりにフルサービスを提供できる態勢を取っていたんですね。というのも、大阪のお客さまって、いろんなサービスを組み合わせて「ここまで価値を出せる」と提案しないと、なかなか買ってくれないんですよ。僕は“幕の内弁当”と呼んでいましたけど。思えば、そういう大阪の土壌に育てられたのでしょう。僕もメンバーもフルサービスを志向し、実際にノウハウも築いてきたので、組織の力に幅が出たことは、むしろ悪い話ではなかった。なので、環境は変わっても、自分たちのスタイルを守りながら走り続けることができたのです。
PwC Japanグループ グループマネージングパートナー
PwCコンサルティング合同会社
代表執行役会長鹿島 章