会計士の肖像
篠崎公認会計士事務所
篠崎 真吾
10年4月、リヴァンプは、経営権をロッテリア側に“大政奉還”する。その年度、同社は13億円の黒字を計上した。不運に見舞われながらも、5年間で企業の基礎体力が回復した証と評して、間違いはないだろう。見事“完投”した篠崎は、当然のごとく、澤田に「次は何をやろうか?」と声をかけられたそうだ。だが、「いったん本業に戻らせてください」と答えて、また別の地平に向かって、歩みを始める。
気がつけば、48歳です。あと一回りで「赤いちゃんちゃんこ」だと思ったら、一つやり残したことがあるのに気づいたんですね。「そういえば、外資系で働いたけど、海外勤務はしたことがなかったな」と。
だから、「マニラでリゾート開発をしている日本人が、現地で会社を上場させたがっていて、できる人間を探している。ただし、マニラ常駐が条件だ」という話が舞い込んできた時、「やらせてください」と即答したんですよ。普通は二の足を踏むのかもしれないけれど、僕にとってはウエルカムです。現地には12年に行き、約2年いました。
マニラのイメージって、「貧しい、汚い、危険」、そんなところじゃないでしょうか。確かにそのとおりなんだけど、僕は2年いて、ここがとても好きになってしまいました。
破けたシャツを着て、洟を垂らして駆け回ってる子供たちを見ているうちに、「そういえば、自分たちもこんなだったよな」ということを思い出させてくれるのです。それに、大人も子供も底抜けに明るいし、バイタリティに溢れている。これって、『三丁目の夕日』じゃないか……。
今まで好きなことをやらせてもらいましたけど、残りの10年、そんな経験も生かして、この人たちと仕事ができたらいいな、役に立ちたいな、と真剣に思うようになりました。現地に人脈もできたので、すでにいろいろとアプローチを始めているんですよ。
例えば、会計のアウトソーシング。「フィリピンには、優秀な若者がたくさんいる」「考えが柔軟で、漢字の事務処理にも適応できる」――。そう言って、会計士の仲間がつくった会社に、話をしています。「若年人口が激減する日本にとって、絶対に必要なサービスなんだ」と。
まあ、普通コンサルティングという仕事は、お客さまが「ここに困っているのですが」から始まるものだけど、この案件に関しては、気づくと「コンサルの押し売り」になっている自分がいます(笑)。
今年3月には、事務所を香港に移転した。当面は、そこを拠点に、日本を含むアジア全体を視野に、さらに新たな事業も模索していく計画だ。ところで、“卒業証書”代わりに取得した会計士資格、結局、その仕事人生に役立ったのだろうか?
いろんな会社に行って、「篠崎さん、それはこの業界では通用しないんですよ」と言われるのが、一番カチンとくるんですよ。“業界の常識”にとらわれた結果、どれほど多くのものが潰れてきたことか。はっきり言えることは、「1円は、どこの業界でも同じ1円だ」ということです。
コンサルタントといっても、僕は、営業コンサルでも、マーケティングでも商品開発でもありません。軸にあるのは、“数字”なのです。特定の業種のスペシャリストではないけれど、会社の成績として必ず表れる数字を軸にして、普遍的な分析や、それに基づく解の提示をしていこう、というのが僕のスタンス。そのための知識、素養を身につけることができたのは、資格を取るために勉強し、監査の現場で生きた訓練を積んだからにほかなりません。
繰り返しになりますが、ビジネスの世界では、数字こそが共通言語なんですね。そして、そのことを一番理解しているのが、会計士のはず。「俺は監査だから」「税務が得意だから」と自分のできることを限定して職域を狭めてしまうとしたら、それはとてももったいないことだと思いますよ。
※本文中敬称略
篠崎公認会計士事務所篠崎 真吾