会計士の肖像
篠崎公認会計士事務所
篠崎 真吾
僕が辞めるのを聞きつけた、かわいがってくれていた米国人パートナーに、昼飯に誘われたんですね。証券監査のスペシャリストでした。これは渡りに船だと、「どっちに行くべきでしょう?」と相談したら、「シノザキ、お前にとって証券は“ラスト・プレイス・トゥー・ゴー”だ。やめておけ」と言うのです。「何言ってるんだ、この人?」って、目が点ですよ。
そうしたら、おもむろに名刺を取り出して、「この人物が部下を探しているから、明日会いに行ってこい」と。書かれていたのは、マイクロソフトCFOの肩書でした。もちろん迷いましたけど、ITは経験していたし、やっぱり楽しそうな雰囲気はする。それで、お世話になることにしたのです。
入ってみると、ちょうど『windows95』発売の直前で、社内はまさにお祭り騒ぎですよ。僕の肩書は、CFO直轄のビジネスアナリストでしたけど、要はルーチンワークを持たない、財務分野の遊軍です。なにせ、会社の急成長期ですから、数字にかかわる問題が次々に発生する。そういうのをプロジェクトベースで解決していく、という感じの仕事でした。
予想どおりすごくエキサイティングで、深夜まで働いてタクシー帰りの毎日も、苦にはならなかったのですが……。ある朝、幼稚園児くらいになっていた2番目の子が、「パパ行ってらっしゃい、今度いつ帰ってくるの?」って、眠い目をこすりながら言うんですよ。自分がいかに“まずい生活”をしているのか、それで思い知らされました。
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