会計士の肖像
国際会計士連盟(IFAC)
理事觀 恒平
代表就任に際してもう一つ、「日本がもっと海外をリードしていけるかたちをつくれないか」という問題意識があった。そのための手腕をさらに発揮できるポジションが与えられたのは、18年。觀は、新設されたデロイト アジアパシフィック リミテッドの監査・保証業務のリーダーに就任する。
ちょうど私が代表になった頃、デロイトがグローバル志向を強めて、国ごとの独立採算ではなく、最終的には一つに統合しよう、という流れが具体化していました。まず国から地域へということで、日本、中国、豪州、東南アジアなどのメンバーファームが参加するアジアパシフィックができて、私はその監査部門の責任者に指名された。それまでは、日本のなかで最高品質のサービスを、というスタンスだったのが、担当地域において同レベルのものを提供できるようリーダーシップを発揮せよ、ということになったわけです。
負託に応えるためには、各国の監査のリーダーたちに同じ目線になってもらわなくてはなりません。デロイトの目指すものは何か、それぞれの国で実現するためには、どうすればいいのかを、じっくり話し合いました。
当然「はい、そうですか」とはいかないのですが、彼らは本筋のところはわかってくれたはず。難しかったのは、むしろ上とのやり取りで、「觀さん、あなたのやり方は〝アジア的〟でコンセンサスにこだわり過ぎる。もっとトップダウンで抑えないと」と指摘されて、「えっ」と思ったことがありました。
欧米人の感覚だと、もどかしく見えるんでしょうね。でも、僕自身はあの組織のなかで、上からボンとやるというのは、ちょっと(笑)。真のグローバル化には、そういうところのお互いの理解も必要になるのかもしれません。
20年初めにアジアパシフィックのシニアアドバイザーに就いた觀は、60歳を迎えたのを機に、同年9月、デロイトを退職する。そして、国際会計士連盟(IFAC)のボードメンバーに就任した。135の国と地域から180を超える会計職業専門団体が加盟する国際組織のボードは、22名。その一員となったのだ。さらに22年からは、日本公認会計士協会のシニアアドバイザーも務めている。
ボードメンバーになった時、折しもそれまでIFAC傘下にあった国際監査基準、倫理基準に関与する団体を規制当局の下に移す、という改革が進行中でした。そして、それをどうやって円滑に進めていくのか、ということが大きな課題になっていました。
もう一つ、当時、世の中では非財務情報の意義が強く認識され、その開示のあり方が議論され始めていました。そこには、財務情報同様、保証が必要になります。IFACとして、その保証業務をどう考えていくのか、というのも重要テーマでした。
それにしても、ボードに行ってみて驚きました。欧米人の多いデロイトの会議と違い、中堅国とかアフリカの小さな国とかからもいろんな人種の人たちが出席して、自由に発言していく。女性比率がどうこうどころか、メンバーは女性の方が多いんですよ。
そういう〝多様性〟は、率直に素晴らしいと感じるのと同時に、その場で日本の存在感をどのように高めていくのかというのが、やはり大事なミッションになる。メンバーたちの発言を聞き、話をするにつけ、そのことをあらためて痛感しました。
具体的な話をすれば、IFACが関連する国際組織はいくつかあって、そこで監査に関係する重要事項が決まっていきます。ただし、そのメンバーに日本のポストが確約されているわけではないのです。そこでの発言権を確保するために、戦略的に人材育成をしているような国もあるなかで、継続的に人を送っていかなくてはなりません。
こうしたことも含めて、直面する監査や倫理にかかわる課題には、金融庁や投資家、企業などを全部巻き込んで進めていく必要がある、というのもIFACの仕事をするようになって理解しました。そのなかで、会計プロフェッションの果たすべき役割がますます重要なものになることは、言うまでもないでしょう。
若い人たちに、言葉を贈るとすれば、グローバルな分野に、躊躇せず乗り込んできてほしいということ。先ほどの国際機関のメンバーに手を挙げるような人に、どんどん出てきてもらいたい。外国人と仕事をするのは大変だけど、国内にいてはわからない楽しさ、やりがいがあります。そういう経験は、必ずこれからの糧になるはずです。
かく言う私も、あのインド旅行がなければ、今ここにはいなかったはず。専門学校の先生ではないけれど、騙されたと思って、一度日本を飛び出してみたらどうでしょう(笑)。
国際会計士連盟(IFAC)理事觀 恒平
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